令和6年度東京消防庁Ⅰ類2回目小論文 消防職員に高い倫理観が求められる理由をあげ、消防職員として都民の信頼を得るためにあなたが取り組むことを述べよ。

2026年2月1日日曜日

 

特殊災害対策車 大井CS(東京消防庁 大井消防署)

令和6年度東京消防庁Ⅰ類2回目小論文

消防職員に高い倫理観が求められる理由をあげ、消防職員として都民の信頼を得るためにあなたが取り組むことを述べよ。

の解答例と解説記事になります。

 

<ヒント編>

―「倫理観」とは―

今回のキーワードとなっている「倫理観」について少し考察してみます。

ネットで「倫理観とは」と検索してみると

人として守るべき善悪の判断基準

社会生活の中で集団や個人から影響を受けて形成される

とおおむねこれらのような形で紹介されています。

法律と異なり、明文化されていないこと、違反した際の罰則規定が無いことが特徴です。

とくに「人として守るべき善悪の判断基準」という言葉からわかる通り、かなりあいまいな尺度が定義されており自身の道徳心が問われる観念といえます。

 

そもそも個人の感覚や性格は多岐にわたっていることが普通です。その状態を踏まえて「人として守るべき善悪の判断基準」といわれてもその基準が多種多様になりうることは想像に難くありません。

 

ではなぜ今回の論題で曖昧な価値観となりうる「倫理観」というワードを盛り込んだのでしょうか。私としては東京消防庁という組織に所属しようとする以上、都民からどのような目で見られ、どのような期待が寄せられるか分かっているかを問うためだと思っています。公務員である以上、法律に従って業務を行うことはもちろんですが、もし自身の良心や道徳心が倫理観を試される場面に晒されたときに東京消防の職員として善悪を判断できるかが見られていると思っています。

 

長くなりましたが、倫理観の考察を終えたところで実際に書く練習をしてみます。

下記の項目についてそれぞれ150字程度で埋めてみてください。

 

「消防職員に高い倫理観が求められる理由」

(消防職員になる以上、都民からどう見られるか・どのような期待が寄せられるか把握する)

 

「都民から信頼を得るために自身が取り組むこと」


<解答例>

消防職員に高い倫理観が求められる理由は、東京都内の消防業務は稲城市を除き、都民にとって東京消防庁しか頼ることができないと考えるからである。しかし、もし仮に一人の職員が倫理観を欠いた行動を起こし、それがニュースとなって報道されれば都民からの東京消防庁への信頼が失われることにもつながる。消防業務は都民の生命、身体、財産を守ることであり、場合によっては防災訓練や救命講習、火災予防業務などを通じて都民に指導する立場になることもある。このことから、都民から東京消防庁を信頼してもらうことは消防行政の最も基本的なことになるため、日ごろから高い倫理観をもって業務にあたらなければならない。また、業務以外の日常においても東京消防庁の職員としての自覚をもって行動しなければならないことは同様である。

 

このことから私は都民からの信頼を得ていくために、救急隊員として救命講習を担当した際は丁寧な説明を心掛けたい。私は以前、地方の消防署にて救命講習を受けたことがある。参加していた方々は私を含めて6名で、一番下は女子中学生、最高齢は50代ぐらいの男性と年齢や職業、体格も様々な方々が参加されていた。そのなかで、例えば胸骨圧迫をとっても女子中学生にとっては力が十分に入らなかったり、高齢男性にとっては足が悪いようで、姿勢がとりづらいことなどがハンデになっているように感じた。それでもなんとか参加者全員が講習を終えることができたわけであるが、私としては参加者の特性に応じて丁寧に説明、指導する必要性を感じた。例えば、力が十分に入れられないようであれば他の方に交代してもらい、自分は通報やAEDの搬送、救急車の誘導などできる役割を引き受ける練習をさせてみるといった要領である。もちろんテキストに沿って救命手順をすべて覚えて頂くことは重要だ。しかし、このことを通じて参加者全員が自分にできることを覚えて頂き、自信を持って講習を終えてもらえるよう努めたい。そしてそれが救急隊員として指導した私への信頼につながり、いざというときにその信頼に基づいて迷いなく救命処置に関われる都民の方を増やしていきたいと考えている。

 

 

<解説編>

構成

構成としては

1段落:倫理観が求められる理由

(都内の消防業務は東京消防しか頼れない・業務上都民に指導する立場になりうるから)

 

2段落:信頼を得るために行動すること

(救急隊員として救命講習の際の丁寧な説明・信頼獲得と自信を持って救命処置に参加できる都民の育成)

 

の構成となっています。

 

 

―倫理観が求められる理由のみを上げる―

ヒント編にて倫理観について少し考察しましたが、今回の論題で求められていることはあくまで

「倫理観が求められる理由」

のみであり、

「求められる倫理観(倫理観の内容)」

については問われていないことです。

ここで論題を読み間違えて、一段落目から延々と「求められる倫理観の内容」について論述してしまうと論題に応えていない答案と判断され不合格になってしまう可能性があります。

そのため、今回の解答例では倫理観が求められる理由として

「都内の消防業務は東京消防庁しか頼れない」

「業務の一環で都民に指導する立場になることもある」

ことをあげ、信頼を損なわないためにも自覚をもって公私の行動を律する必要があると端的に解答するにとどまりました。

 

当ブログの「はじめに」でも紹介していますが、小論文の基本は結論を述べた後、その理由を述べることです。そのため、解答する前によく論題を読み、問われていることに対していかに一行でも早い段階で結論を提示できるかが合否を分けるポイントだと思っています。

 

―倫理観を働かせるタイミングとは―

本文中にも述べていますが、私は以前、地方の消防署にて救命講習を受けたことがあります。その時の様子は本文通りで、参加者は年齢や職業、体格も様々なこともあり、全員か完璧に救命手順をこなせるようになったかというと少しあやしいと感じる部分もありました。

その時の記事はこちら↓↓

某市の消防署にて救命講習を受講したときの話

 

消防署としては救命講習を受講したからにはすべての手順をマスターできるよう指導し、最後に修了証明書を渡すことが仕事になるはずです。しかし、先ほども述べたように様々な方が参加する講習でただ講義を行い、証明書を手渡すだけでは受講者の自信につながりづらいのではないかと思っています。


実際、東京消防庁の実施する「消防に関する世論調査」においても、応急手当を実施できない理由を問うアンケートでは例年「自信がないから」という答えがトップを占めています。

(※「消防に関する世論調査」を知らない方は今すぐ「東京消防庁_世論調査」で検索!)


そこで、講習の参加者に自信を持って修了してもらうために必要な事が本文中でも述べた「丁寧な説明」ではないかと考えているわけです。


そもそも、救命講習ではテキスト通りにすべての手順をできるようになることが想定されているわけです。しかし加者には様々なハンデがあることを想定し、すべての手順を理解しつつも、自分にできないこととできることをはっきりと認識してもらうことが重要だと思っています。そして、自分にできないことは他者を頼り、できることは率先して引き受けられる勇気を生み出せるような講習がベストだと思っています。


そのときに重要なことがまさに「倫理観」を働かせることだといえます。消防署の職員として決められたマニュアル通りに業務をすることはたしかに重要です。

しかし、講習に参加された方々の様子をしっかり観察し、どうすれば指導スタッフに信頼が寄せられ、一人一人が自信を持って講習を修了できるか考える際に倫理観を働かせなければならないと思っています。


すなわち講師の立場から参加者たちを思いやるとも言い換えられるでしょう。


倫理観を働かせるということはヒント編でも述べたように法律と異なり明文化されておらず、言葉での表現が難しい要素です。しかし、このような場面こそが信頼感や自信を持ってもらうために重要であり、東京消防庁の職員としてルールは守りつつもどういう行動を選択すべきか良心が試される瞬間だと思っています。

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