令和5年度Ⅰ類2回目 「東京消防庁の職員に求められる倫理観や規律の順守が求められる理由についてあなたの考えを述べよ」
令和5年度Ⅰ類2回目
東京消防庁の職員に求められる倫理観や規律の順守が求められる理由についてあなたの考えを述べよ
の解答例と解説記事になります。
<ヒント編>
➀問題文の解釈
今回の問題文のキーワードは「倫理観」と「規律の順守」であることは間違いなく、それを踏まえて論文を構成していくことになります。よって構成としては
「東京消防庁の職員に求められる倫理観」
と
「規律の順守が求められる理由」
の2部構成で書く必要があります。
②倫理と規律の違いとは
今回のキーワードである「倫理」と「規律」について考察してみます。
倫理とは言い換えれば「モラル」や「マナー」といった「形の無い(明確化されたルールではない)決まり」であり、個人の心掛けや良心に訴えかけるルールといえます。
一方、規律とはその逆で「ある事項について定められた明確な規定」です。
消防の業務でいえば消防法に従うことはもちろんですが、災害現場での業務は指揮者をトップとした明確な指揮系統が存在しており、指示や命令、あるいは普段の訓練にて実行している手順を忠実に守ることが重要です。
それは隊員や要救助者の安全を守るためのルールであり絶対に守られなければならないものと考えられます。
上記で見たように「倫理観」を形の無いルール、「規律」を明確化されたルールと理解した上で論文を構成していきましょう。
③練習
ウォーミングアップが終わったところで実際に論文を書く練習をしてみます。下記の項目をそれぞれ100字程度で埋めてみてください。
「東京消防庁の職員に求められる倫理観」(約100字)
「規律の順守が求められる理由」(約100字)
<解答例>
東京消防庁の職員に求められる倫理観とは自己研鑽する志を持つことと要救助者を絶対に助ける意識を持って仕事に臨むことだと考える。私は以前に東京消防庁の業務説明会に参加した際、東京消防庁には地方消防と比べ様々な職種や庁内資格があるという印象を受けた。さらにそれらの資格やスキルを入手していくにあたってサポート体制も備えているということも知った。そのため、消防学校卒業後はポンプ隊勤務のみにとどまっているのではなく、自分で行動を起こしてスキルを磨くなり、各種資格取得のために自己研鑽する必要があることを実感した。また、私は以前東京消防庁のイベントにおいて訓練の様子を見学したことがある。その訓練の想定は建物の上層階から出火し、逃げ遅れが4名いるというものだった。訓練開始後、救助隊が建物の外から要救助者を確認するとメガホンを使い「あなた方を確認しました。絶対に助けるので待っていてください。」とアナウンスし、彼らを安心させようと努めている様子がうかがえた。この時私は救助隊に限らず、東京消防庁の職員として必要なのは都民を絶対に助けるという意識を持って仕事に臨むことであると実感した。
つぎに規律の順守が求められる理由については、一つは災害現場での業務において明確化された指揮系統を伴うチームワークを発揮するため、もう一つは消防士は公務員であるためだ。上で述べた訓練の続きになるが、はしご隊やポンプ隊、救助隊が消火や救出に向かう直前に指揮隊から各々の任務を下命され、各部隊が各小隊長の指示に基づいて規律正しく活動している姿をその訓練で見ることができた。災害現場では規律正しい動きが求められることを実感したのである。公務員という仕事の性質上、東京消防庁の管轄内ではどこであっても同一レベルの公平な消防サービスの提供が求められる。しかし都民はそのサービスを受けるにあたって民間企業と違って職員を選べないため、いうなれば東京消防庁品質を維持するためにも規律の意識が必要となってくると私は考えている。
次に消防士は公務員の立場であるということをあげた理由は、公務員には法令順守義務があるからだ。法治国家である日本において消防の枠組みで行政に携わっている以上、民間企業の従事者以上に法の順守が求められると私は考えている。たとえば査察職員であれば自分の指導の根拠がきちんと消防法にのっとった公正なものでなければならない。また消防法に限らず、何らかの法に違反するということは他人に不利益や危険を及ぼすことである。それは都民の生命、身体、財産を守るという東京消防庁の使命に大いに反する行為であり、組織の信頼失墜につながることであると私は考えている。
このことから、私は東京消防庁の職員になった際はポンプ隊に限らず、自分に任された仕事一つ一つに興味を持って取り組むことで常に目標を持って自己研鑽することを心掛けたい。そして都民を絶対に助ける意識と公務員として法令や規律を順守する意識を持ちながら業務に打ち込みたい。
<解説編>
構成
構成としては
1段落
東京消防庁の職員に求められる倫理観(自己研鑽する志、目標を持つこと)
2段落
規律の順守が求められる理由その1(災害現場でのチームワークのため)
3段落
規律の順守が求められる理由その2(公務員としての法令順守義務のため)
4段落
まとめ、抱負
の構成となっています。
衝突する「倫理観」と「規律の順守」
本文では述べませんでしたが、倫理観と規律の順守が時に衝突するケースがあるのをご存じでしょうか。最近の事例では愛知県と佐賀県で発生しており、救急隊員が懲戒処分、戒告になったとニュースになりました。
概要としては
・心肺停止の患者のもとに救急隊員が到着
・愛知県のケースでは偶然近くに看護師が、佐賀県のケースでは患者の妻が看護師
であった
・救急隊員が看護師に静脈路確保を指示
・結果として患者は一命をとりとめた
というものです。
結果として患者は助かっているのですが、これのどこが悪いのかというと
「救急隊員の規則違反」
です。そもそも静脈路確保は救急救命士が医師から指示を受けた場合のみ実行可能な「特定行為」です。この行為を、上記のケースでは医師からの指示なく救急隊員(ニュースを見た限りでは救命士かどうかまではわかりませんでしたが)が看護師の方に依頼して実行させています。
私が想像するに、心肺停止という一刻を争う状況で救急隊員は「絶対に患者を助けたい」という思いをもって活動していたはずです。そして偶然にも近くに看護師がいたので医師からの指示を待つより先に看護師に静脈路確保をしてもらえば救命のスピードアップが図れると考えての行動だったと思われます。
しかし
「絶対に患者を助ける」という救急隊員としての使命感、倫理観
と
救急救命士の業務上の規律、規則
が衝突し、患者が助かったにもかかわらず当該の救急隊員が規律違反として処分を受ける事態になったというわけです。
一刻を争う救命の現場で規則が存在する意義、また倫理観と規律の順守のバランスについて非常に考えさせられるケースだと思っています。
詳しくは
「救急隊員が独断で現場に居合わせた看護師に救命処置を指示 佐賀 愛知」
でグーグル検索してみてください。現在(2025年8月時点)トップで出てきます。
※参考「救命士の特定行為」※
上に述べた「救命士の特定行為」ですが2025年8月現在で5種類あります。(心肺停止患者を対象にしたもの3種類、心肺停止前の患者を対象にしたもの2種類)
―心肺停止の患者を対象―
・機材を用いた気道確保
・静脈路確保のための輸液
・エピネフリンを用いた薬剤投与
―心肺停止前の患者を対象―
・静脈路確保及び輸液
・ブドウ糖溶液投与
消防受験者としての振舞い
解答例を書いている際、かつて私が面接受験した際に試験監督の消防官から全員を対象にしたアナウンスをふと思い出しました。それは面接が終了し会場(東京消防庁消防学校)を出てから最寄り駅までの道で
「歩道を歩くとき道幅いっぱいに並列して歩かない」
「きちんと横断歩道をわたる。斜め横断しない。」
ことを意識して帰るようにというアナウンスでした。
つまり、いくら受験生でまだ消防官ではないとしても、近隣の住民からしてみれば消防学校から出てきたスーツ姿の人物は東京消防庁の職員と思われるわけです。
しかも筆記試験時には及ばないものの、試験終了後は多数の人物が行列となって消防学校を後にします。その際に、帰り道で自由奔放なふるまいをしていたら地域住民の迷惑になることは必至です。しかも消防学校の所在地は渋谷の小高い丘沿いに立地しており車道も狭い箇所がたくさんあります。そのようなところで斜め横断でもすれば事故の原因にもなりかねません。
消防受験者として倫理観や規律意識を持って行動してほしいという東京消防庁職員からのお願いだったのだなとふと思い出しました。
これを読まれている消防受験者の方は
まさか横断歩道を信号無視して渡ったり、
斜め横断したりはしていませんよね?
最近ではながらスマホで車や自転車を運転することが問題になっていますが、まさかしていませんね?
受験時だけでなく普段の生活面でも倫理観や規律意識を持って過ごしていきたいところです。
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