都市における国際化の進展が社会に及ぼす影響をあげ、それに対する消防行政の取り組みについてあなたの考えを述べなさい。

2019年2月18日月曜日

















東京消防庁平成26年度Ⅰ類1回目

「都市における国際化の進展が社会に及ぼす影響をあげ、それに対する消防行政の取り組みについてあなたの考えを述べなさい。」

の解答例、解説記事になります。まずは<ヒント編>を読み、自身で論文の簡単な骨格を作ってみてください。解答例はヒント編の次にあります。ちなみに記事最後に東京都町田市で行われたテロ対策訓練の映像(youtube)も貼っておきますので参考にどうぞ。


<ヒント編>
まず、問題文は大きく2つの要素に分解できます。
すなわち、

    都市の国際化の進展が社会に及ぼす影響をあげ、
    それに対して消防がどのように取り組む(対処する)のか考えを述べる

です。本文はこの流れに沿って書かなければならず、これが論文の骨格となります。

上記を踏まえて実際に書き始めるわけですが、最初に考えたいのはなぜ自治体が観光資源をPRし県外に住む日本人はもちろん外国人までをも取り込もうとしているのかです。

この「自治体が外国人を取り込みたい理由」「外国人が来訪したことによる結果」がわかれば上記の①が埋められるはずです。

もう少しヒントを出すと、自治体が事業展開する上で財源となるものは当然税金です。そしてその税金はどこから納められるものでしょうか。また、世界では宗教がらみのテロ事件が頻発しており今後日本が標的になることも十分に考えられます。

これらを踏まえたうえで、インターネットや消防白書等を参考にご自身で①と②をそれぞれ150200字程度で書いてみてください。
(※以下に解答例がありますが、それを見る前にまずはご自身でできる限りで結構ですのでやってみてください。)

    都市の国際化の進展が社会に及ぼす影響をあげ、(約150字)
    それに対して消防がどのように取り組む(対処する)のか考えを述べる(約150字)







<解答編>

都市の国際化においては2つの影響が生じると考える。すなわち消費の拡大とテロのリスク上昇だ。例えば、在住、来訪外国人が増加した際に日本において生活に必要な物資、土産物等を購入すると仮定すればそれだけ需要が拡大する。
そして消費が促されることで日本企業の利益も上昇していくはずだ。その結果、企業が自治体や国に治める税金の額も増えるはずである。収められる税金の額が増えれば国や自治体としても行政サービスの質や量を上げることができる。一方で、様々な思想や価値観を持った外国人の来日に際し懸念されるのがテロの発生である。危険な思想を持った外国人が犯行に及ぶ場合もあれば、そのような思想に感化された日本人が行う場合も考えられる。そしてテロはいつどこで発生するか分からず、また一度発生すると多数の死傷者が出る。そのため、いかに一人でも多くの命を救えるかが重要になってくる。


まず、在住、来訪外国人への対応策では救急の面が重要になり、民間人の協力が不可欠だ。なぜなら症状の程度は自分にしかわからないものであり、外国語での通報は東京消防庁の場合通訳センターを仲介するため、症状を把握するまでに時間を要してしまうからである。よりスムーズに対応するためにはその場に居合わせた民間人が症状をできる限り把握した上で通報する必要がある。しかし、外国人との意思疎通に自信がない方がいるのも事実だ。そのため、救急言語支援ボードを使った救命講習を実施し、受講修了者にそのボードを配布してみてはどうか。このようにして外国人に対して気軽に救いの手を伸ばせる方が増えれば、在住、来訪外国人が東京で安心して過ごせる環境が整うはずである。


次にテロ対策の取り組みについては自衛消防隊への意識付けをあげたい。例えば商業施設でテロが発生した場合、傷病者の応急処置や通報、初期消火等を行うのは自衛消防隊である。普段は企業の従業員として働いている彼らに対し、万が一の時にそれらの活動を並行でこなし多大なプレッシャーの中、一人でも多くの客を守るという意識を持ってもらわなければならない。その為に、自衛消防操法大会で多数の自衛消防隊が集まった際に救助隊、消火隊、救急隊から選出した職員に現場での体験談を話してもらうのはどうだろうか。あるいは救助、救命現場を映像で記録したものを見せるのもいいだろう。つまり、テロ発生時は自分たちがファーストレスポンスする立場であるという当事者意識を持たせるのである。この取り組みにより、テロ発生時も落ち着いて消防への通報や初期消火等ができ、消防隊が到着するまでの間に最善の行動がとれる自衛消防隊を増やしていくべきである。こうすることでテロ被害を最小限に抑える消防と民間が連携した強い街づくりができると考える。(1127字)



<解説編>

●構成

構成としては、

1段落:国際化の影響
2段落:増える外国人への救急対策
3段落:テロ対策、自衛消防隊

です。問題文の指示通りに
「国際化の影響」
「消防行政がとるべき対策についての考え」

の順番に書ければ形式上はOKです。



●国際化するメリット―「外国人観光客が増える」だけで終わってはいけない―

今やどこの自治体も地元特産品や観光名所を国内外問わずPRしています。なぜでしょうか。
日本人はもちろん、外国人までも観光客として取り込もうとしている理由はズバリ

「税収を上げたいから」

です。観光客が増え、現地での消費が増えればその分だけ地元企業が儲かり、企業が儲かった分だけ自治体へ納める税金額が増えます

納められる税金が増えれば、自治体としてもより良い行政サービスを行うための財源ができるというわけです。

こう見ると公的機関といえども、例えば小売店によくある「お客様ご優待!○○キャンペーン」と同じような臭いがします。

しかし現在の日本は人口減少という、一自治体だけではどうしようもない大きな問題が日本を覆っている以上はマーケットを外国人にも広げていかなければならない状態というわけです。(東京都がオリンピック招致に躍起になっていたのもこのためです。)

「外国人を含め多くの観光客を取り込み、地域を活性化させ税収を上げたい」

これが自治体の狙いです。

そして取り込んだ外国人たちが犯罪や火災、急病、事故の心配なく安心して過ごしていくために警察や消防もまた国際化に対応していかなければならないというわけです。



●救急支援ボードとは

本文2段落にて、救急支援ボードについて言及しています。これは症状ごとにイラストと各言語が記されており、該当するものを指させば症状がおおむね把握できるアイテムです。

「東京消防庁 救急支援ボード 外国人」 で検索!

これは便利だ思いました。私が某市で救命講習を受講したときは外国人への応急手当については特に言及がありませんでした・・・

これはもっと普及させるべきでしょう。なんなら普通救命講習にこれを使ったコースを加えることで外国人にも気軽に救いの手を差し伸べられる人が増えます


●テロと自衛消防隊
 
 最後に自衛消防隊(以下自消隊)についてみていきます。自消隊とは商業施設や工場ごとに設置されている消防ボランティアのようなものです。組織としてはおおむねどこも指揮班、通報班、救護班、消火班に分かれており、有事には消防隊の到着まで班ごとの役割の元に作業に当たります。

 そして本文で述べたように例えば商業施設でテロが発生した際、ファーストレスポンスするのは自消隊です。ここがポイントでもあるのですが、彼らは普段は一企業の従業員として働いている身であり、消防や警察のように日々人命を守る仕事についているわけではありません

テロは火災とは異なり、一瞬で多数の死傷者を出す人為的災害です。当然自消隊が活動開始する時点で彼らの目の前には血みどろになった者や意識の無い者が多数横たわり、また黒煙や炎がくすぶっている状況が想像できます。

 少々大げさかもしれませんが、そのような凄惨な状況の中で民間人である彼らが落ち着いて消防や警察への通報、応急手当、避難誘導、初期消火、逃げ遅れの把握、出火点の特定ができるかがテロ被害を抑える上で重要になってきます。

 凄惨な現場において、自身の役割をできる限り遂行してもらうためにも、操法訓練のみでなく警防課所属の消防職員から人命救助の体験談を聞いたり、実際の事故や火災現場からの救助救命活動の映像を見てもらうことで当事者意識を持ってもらうことがテロに強い街づくりになると思います。

 最後に、私が2019年217日に撮影した東京都町田市テロ対策訓練の映像を載せておきます。参考までにぜひ見てみてください。







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