少子高齢化が社会に及ぼす影響を上げ、それに対する消防行政の取り組みについてあなたの考えを述べなさい

2019年12月23日月曜日













重機搬送車とアスタコ(東京消防庁 6本部HR)


東京消防庁平成26年度Ⅰ類二回目
「少子高齢化が社会に及ぼす影響を上げ、それに対する消防行政の取り組みについてあなたの考えを述べなさい」

の解答例、解説記事になります。まずは<ヒント編>を読み、自身で論文の簡単な骨格を作ってみてください。解答例は<ヒント編>の次にあります。
<ヒント編>
その1:論題分析
問題文は大きく2つの要素に分解できます。すなわち、


Ⅰ、少子高齢化が社会に及ぼす影響を上げること
Ⅱ、それに対して消防行政が行うべき取り組みについての自分の考え

の2つです。
よって文章を書いていく際はⅠを書いた後にⅡを書かなければならないことがわかります。それ以外の自身の知識や知っている事実は一切書く必要がありません。論題で問われていることから外れてしまいます。

その2:課題分析に基づき、論の構成を練る
では論の出発点となるⅠの事項について考えていきます。少子高齢化とは社会にどのような影響をもたらすのか少なくとも2つ上げてみてください。(※それぞれ簡単に1,2行程度で上げてみましょう。)
影響①
影響②
(※ちなみに、Ⅱで書くべきことを見据えて「消防で対処できるような影響」を挙げてください。でないと行き詰まったり、論題からずれた解答になってしまいます。)

次に、上で挙げたそれぞれの影響とリンクする形で消防行政の行うべき取り組みを考えてみてください。こちらも1,2行程度で簡単に。
影響①に対して:
影響②に対して:

ここまで構想できれば論文の骨格はほぼ完成です。

最後に
「まとめ・結論」です。

消防行政の取り組みをより具体的に、どのように行っていくのかをまとめていきます自治体ホームページ白書新聞などを使って得られた情報に自分の考えや体験談を盛り込み、結論につなげます。
構想はできたけれども、字数の増やし方に不安のある方は以下の解答例を参考にしてもらえればと思います。
<解答例>
 少子高齢化が進むことによる社会への影響は3つ上げられる。すなわち少子化が進行することで地域防災の担い手が減ること、高齢化の進行に伴い救急要請の増加そして大規模災害時における要援護者数の増加が上げられることだ。火災や災害で亡くなる方の多くが60歳以上の高齢者であることから、彼らをいかにして守っていくかが重要となる。私はそのためには未然に被害を防いでいくことが大切であると考える。つまり、そもそも火災を発生させないことや救急車を本当に必要な時に呼んでもらうこと、台風や大雨等あらかじめ接近が予知でき得る自然災害に対して早期避難を心掛けるようにしてもらうことである。
 
 私は消防行政が上記のことを都民、とりわけ高齢者の方々に周知していくにあたって防火防災診断の機会が活用できると考える。すなわち、高齢者宅へ伺い火災を未然に防ぐ呼びかけや、正しい救急要請、災害時の早期避難の心がけを説明し火災や災害時の被害を軽減させるのである。ただ、アドバイスしたとしても自分事として受け入れてもらえないケースが想像できるのもたしかである。なぜなら、誰しも火災や大規模災害による被害に直面するのは一生に一度あるかないかといった確率であるため、まさか自分が災害の被害に遭うとは思いもしていない方が多いかもしれない。しかし火災や災害によって犠牲になる方の多くが60歳以上の高齢者である事実を考慮すると、高齢化社会において守らなければならないのは彼らの安全なのである。

 そこで、高齢者の方々に当事者意識を持っていただくよう防火防災診断を実施していかなければならない。例えばたばこの不始末がどのような結果を招くのかを画像を使いながら説明したり、2019年に発生した台風19号による犠牲者の多くが高齢者であったことを当時の新聞記事を用いながら解説する等なるべく納得がしやすいように実施するのである。また安易な理由で救急車が出動している実態があることも紹介し、緊急時以外は#7119救急相談センターに相談して頂くよう案内することに努めたい。このように災害の被害に遭いやすい高齢者の方々を災害から未然に守り、自助力の強化を図っていくことが少子高齢化が進行したとしても火災や災害に対して安全、安心な社会を作っていけると私は考える。
<解説編>
●構成
1段落:
少子高齢化進展による社会への影響
(地域防災担い手の減少 / 高齢者の救急要請増加 / 大規模災害時の要援護者増加)

2段落
・上記に上げた影響に対する消防行政の取り組みについての考え
(防火防災診断業務を活用し、火災の未然防止、正しい救急車利用の呼びかけ、災害時の早期避難のアドバイス)

・譲歩(診断を実施しても高齢者が聞き入れてくれないのでは?)

3段落
ではどのように防火防災診断を実施するか

の構成です。ヒント編で提示したように、ピックアップした影響(1段落)と消防行政の取り組み(2段落)がリンクしていることがわかります。
 また、1段落にて上げる影響は必ず消防で対処できるような影響を書かなくてはいけません例えば高齢者が増えることで社会保障費もまた増加するわけですが、これに対処するのは市民の生命身体財産を守る消防業務の管轄ではない事がわかるはずです。そして、この段落で書くことはあくまで少子高齢化の影響でありそれ以外の知識や事実は一切書く必要がありません。例えば日本の人口推移や増加した高齢者を支えていく社会保障費の金額等、これらは全く論題にて問われていないものであり書く必要がないのです。ここでは論題に従って早い段階で少子高齢化による影響を上げきる必要があります。


●譲歩
 2段落4行目からの

“ただ、アドバイスしたとしても自分事として~~のも確かである。・・・・”

から始まる部分は「譲歩」といわれるものです。
 譲歩とは、自説に対立する意見をくみ取ったうえで反論し自説の説得性を強化していくテクニックです。これは主に欧米での討論でよく使われるテクニックだそうで、これを自分の意見に盛り込むことでより説得力を強化することができます。これは私が大学受験予備校に通っていた際に英語担当の講師から聞いたことであり、欧米の実際の討論で使われているか真偽は不明です。
 しかし、改めて文章を読んでみると自分の意見だけを押し付けず、反対意見もくみとったうえでの主張をしており印象が良くなっています。小論文の構成において譲歩は絶対に必要なものというわけではないのですが、あれば頭一つ抜き出た解答を作ることができます。

●防火防災診断とは?
 東京消防庁の業務の一つに「防火防災診断」というものがあります。これは災害時に要援護者となりうる高齢者や障がいを持った方々の住居に東京消防庁の職員が伺い、火災リスクがある個所や家具の転倒防止、避難袋の状態等についてのアドバイスを行っていく業務です。
 消防業務といえば救助や消火、救急が取り上げられがちです。しかし、高齢者や障がい者の方を災害の危険から未然に守り、また災害時における自助力を高めていける業務という点で私はこの「防火防災診断」もまた消火や救助、救急と同じで人々の安全を守る仕事であるように思います。

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