住民の防災への意識を高めるための現状の課題をあげ、消防職員としてのどのような取り組みが必要か、あなたの考えを述べなさい。
東京消防庁平成27年度Ⅰ類1回目
の解答例、解説記事になります。まずは<ヒント編>を読み、自身で論文の簡単な骨格を作ってみてください。解答例はヒント編の次にあります。
<ヒント編>
① 課題分析
今回の論題は非常にシンプルかつ明快なものとなっており、実際に書くにあたっては
・住民の防災意識向上にあたっての課題
・それに対し東京消防庁職員として取り組むべきことへの自分の考え+そう考えるに至った理由
の2段階構成になります。
② 住民の防災意識向上にあたっての課題とは・・・
構成が決まったら次に防災意識の向上における課題を上げる必要があります。これについて手っ取り早く参考にできるのが「消防に関する世論調査」です。
これは東京消防庁が独自に都内で実施しているもので、ランダムに選んだ都民に火災予防や救急、防災についてアンケート式で調査しているものです。下のリンクを参考に防災意識向上にあたっての課題にはどのようなものがあるか調べてみてください。↓↓
(消防に関する世論調査-東京消防庁)
※結果は毎年更新されていきます。最新の調査結果を見るようにしてください。ちなみに今回参考になるのが ”調査結果(4)自主防災に関すること” です。
防災意識向上の課題が把握できたら実際に書く練習をします。構成は①で上げた通りで問題ありません。それぞれの項目について150~200字程度で埋めてみてください。
・住民の防災意識向上にあたっての課題(150~200字)
・それに対し東京消防庁職員として取り組むべきことへの自分の考えとその理由(150~200字)
<解答例>
住民の防災意識向上における課題は防災訓練の参加率の低さである。東京消防庁が2019年度に実施した消防世論調査によると、どの訓練にも参加したことがないと答えた方が6割を占めていた。理由としては訓練があることを知らなかった、時間帯が合わなかった等が上げられている。例えばスタンドパイプを用いた消火活動においてはバルブを開放し送水する者、筒先をもって火点に放水する者の2名が最低でも必要になる。その他には消防に通報する者や消防車の誘導、けが人の手当てなど多くの役割が必要であることが想像できる。上記のことから防災訓練は日ごろからなるべく多くの方に参加して頂き、いざというときに各々の役割に沿って消防が到着するまでの間に十全な対応ができるようになってもらう必要がある。
この防災訓練の参加率の低さを改善していくには地道な声掛けを実施していく取り組みを上げたい。まず職員が中心となり消防団や町内会スタッフたちと2,3人ほどのグループに分かれて訓練場所付近の住民宅に一戸ずつ伺い、訓練の参加や見学をしていただけるよう呼び掛けていくのである。非常に地道な取り組みになるかと思われるが、このように考える理由は私が家具販売の経験をしていたことによる。私が勤めていた家具販売会社では5,6か月に一回、一品少なくとも30万円以上する高価な商品の販売イベントを行っていた。その販売会は招待するにあたって選抜した顧客に事前にご案内状を送付し、その4,5日後に担当の営業者がお宅に営業訪問していくことで顧客を招待していく方式をとっていた。しかし選抜した顧客といえどこのイベント自体に興味のない顧客がいることも事実である。実際に訪問して話をしてみると案内状があったことを忘れている方が多く、10件ほど対面で話をしてようやく1件の顧客招待につながるのである。
このことから防災訓練参加の呼びかけも同様に、関心がないことは承知の上でいかに地道に声掛けを行い興味を起こさせるかが参加率の低さを改善していく手段になると考えている。これは非常に地道な活動になるため、かえって非効率だと批判されるかもしれない。しかし多くの人が毎日仕事や家事に追われ、また情報過多な現代にあっては回覧板などで告知をしただけでは到底忘れられてしまうと考えなければならない。このような現代において、世間一般の方々にとってなじみが薄い防災訓練に参加を促すためには当日に訓練場所付近の住人宅一戸ずつに対し地道に声掛けの訪問活動をしていかなければならないと考えている。そして一人でも多くの住民の方に防災に対して興味を持ってもらい、訓練に参加あるいは見学をして頂いて防災意識の向上に努めてもらう必要があると考えている。
<解説編>
① 構成
構成は
1段落
・住民の防災意識向上にあたっての課題
(防災訓練の参加率の低さ)
2段落
・それに対し東京消防庁職員として取り組むべきことへの自分の考え
(消防団や町内会と連携し地域住民への声掛け)
地道な声掛けが必要だと考えた理由
(家具販売イベントでの営業訪問の経験)
になります。
② 防災意識向上にあたっての課題で「防災訓練の参加率の低さ」を選んだ理由
私が本文中で「防災訓練の参加率の低さ」を上げた理由としては、一般市民による災害初期対応も消防と同じく役割分担、チームワークが必要になるからです。1人ができていればいいというものではなく、なるべく多くの者が互いにコミュニケーションをとり各々の役割に沿って同時進行で事に当たる必要があります。
具体的にいうとスタンドパイプ取り扱い時は、
●消火栓のバルブを開放し送水する者
●筒先を持ち火点に向かって放水する者
の2名が最低でも必要になります。あとは本文でも見たように応急手当する者、消防に通報する者、消防車を誘導する者等多くの役割が必要になります。
AED取り扱い時は
●傷病者に接触し脈や呼吸の確認、心臓マッサージする者
●AEDを調達する者
●消防に通報する者
の3名が最低でも必要になります。このことから防災訓練は一人でも多くの方に参加してもらい、万が一の際の対応方法やどのような役割が必要になるのかを住民同士が共有しているのが望ましいことになります。
防災訓練においては回覧板や掲示板が告知案内の媒体になるかと思いますが、本文でも見たように文字だけの宣伝ではまず記憶に残らないと考えた方がいいでしょう。なるべく多くの住人に防災に興味を持ってもらい、訓練に参加してもらうためにはやはり一軒ごとに住民と対面で話をして勧誘する必要があると思います。その際に訓練の内容や参加をしてもらう理由を説明し、それでも興味がないと言われたら仕方ありませんが断られてもともとというスタンスで10人に1人程度の割合で勧誘できれば儲けものだと考えています。
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