令和6年度東京消防庁Ⅰ類1回目 小論文「都民が東京消防庁に期待することを上げ、その期待に応えるために東京消防庁が行うべき施策についてあなたの考えを述べよ」

2026年1月25日日曜日
警防SC (東京消防庁 丸の内消防署)

令和6年度東京消防庁Ⅰ類1回目小論文

 「都民が東京消防庁に期待することを上げ、その期待に応えるために東京消防庁が行うべき施策についてあなたの考えを述べよ」

の解答例と解説記事になります。

 

<ヒント編>

都民が東京消防庁に期待することとは

今回の解答のポイントとなる要素は「都民が東京消防庁に期待すること」ですが、はっきり言って正解はなく、自分で考える必要があります。

そこで解答するにあたって参考になるものが

「消防に関する世論調査」

です。


これは東京消防庁が独自に行っている都民向けの意識調査のようなもので、全都民の中から無作為に選ばれた約5000名にアンケートを取るというものです。

 

各年のデータが東京消防庁公式サイトで公開されているので知らなかった方は要チェックです。「東京消防庁_世論調査」で検索してみてください。

 

消防に関する世論調査は現在(2026112日時点で)平成28年度分から公開されています。今回は最新のものである令和6年度分を参考にしたいと思います。

 

ページを開くと「単純集計」と「クロス集計」のものがありますが、「単純集計」を参考にしてみます。

 

一通り見たところで、都民が東京消防庁に期待していることを自分なりに定義していきます。

 

ここで注意したいことは優先順位が高いと判断できる事項を参考にすることです。例えばグラフの中で例年高い割合を占めていたり、年々増加がみられる事項が該当します。

逆にグラフの中で例年一番低い割合で推移しているものは、確かに重要な事ではあるものの統計を取った全体の中で見れば少数の事項であるため優先順位が低いと判断できます。

 

そして、都民が東京消防庁に期待していることが定義できたらそれに応えるための施策について考えを述べられればOKです。

 

ウォーミングアップが終わったところで実際に論文を書く練習をしてみます。下の各項目についてそれぞれ150字程度で埋めてみてください。

 

・「都民が東京消防庁に期待すること」

(正解は無い・調査結果から優先度の高いものを参考)

 

・「期待に応えるために東京消防庁が行うべき施策」


<解答例>

都民が東京消防庁に期待することは大規模災害への対策であると考えている。理由としては毎年行われている消防に関する世論調査で例年特に東京消防庁に力を入れて欲しい取り組みとして一番選ばれ続けているからだ。例えば内閣府によって公表されている首都直下地震の被害想定は建物倒壊による死者は最大で11000人、揺れによる建物倒壊に伴う要救助者数は最大で72000人に上ると試算されている。この数字全てが東京消防庁管内で発生するとは言えないが、大規模な被害が発生することは容易に想像できる。このような想定があるからこそ、おそらく都民の方々は地震等の大規模災害に対する東京消防庁の対応に期待を寄せているのではないかと私は考えている。

 

しかしながら、ひとたび大規模災害が発生すれば公助機関は発生した複数の災害の規模に応じて優先順位をつけて活動しなければならない。その際に都民一人一人に対応することはほぼ不可能である。公助機関としては優先順位の高い災害に対応し、都民自身が自分や周囲を助けられる能力を身に付けることで結果としてより良い大規模災害対応が実現できると考えている。そして、このような大規模災害への対応を図るために行うべき施策が自助と共助能力の向上である。しかし上記の消防世論調査によればスタンドパイプ使用法を知っている割合が例年最下位をマークしていたり、逆に救命講習や防災訓練については実施していることを知らなかったと答える割合が例年トップを占めている。これを踏まえた上で東京消防庁の行うべき施策として消防署ごとにより地域に密着した細かい周知を実施することをあげたい。具体的には現在、防災訓練や救命講習の案内は主に町内会の掲示板や各消防署のホームページ上で行っていると思われる。しかし、これらに加えて会場となる場所の近辺にある会社や近くに住む住民に向けたチラシを作成しポストへ投函することで直接イベントの周知を行うのである。当然、消防署職員だけでは人員をカバーできないと思われるので、管轄エリアの消防団員の力も借りながら力づくでもイベントの実施を知らなかったと答える割合を減らしていく必要がある。その上で、訓練に参加する時間が無かった、講習を受ける時間が無かったと答えられるのであればやむをえないが、まず優先して取り組むべきは訓練や講習の実施を細かく周知して1人でも多くの方を訓練や講習に呼び込むことと私は考えている。


以上、都民が期待する大規模災害への対応についての東京消防庁がとるべき施策について述べたが、重要なことはその際に必ず都民の力が必要になることを知らせることである。例えば、先ほど述べたチラシに大規模災害時に自分や周囲を助けるために必要な力になると宣伝文句を掲載することで、都民が寄せる期待とイベント内容が合致して興味が湧くということも十分考えられる。このような細かい積み重ねを通じて都民の方々へ自助、共助が普及啓発され、結果として都民が期待する大規模災害時への対応力が向上していくと私は考えている。

 

<解説編>

構成

段落構成としては

1段落

都民が東京消防庁に期待すること(大規模災害への対応)

 

2段落

その期待に応えるために東京消防が行うべき施策(自助・共助の啓発)

 

3段落

まとめ

 

の構成となっています。

 

 

―消防世論調査からどのように都民の期待をよみとるか―

消防世論調査を見ると、Q27 において東京消防庁に力を入れて取り組んで欲しい項目を選んでもらうアンケートがあるので、こちらから都民の期待を読み取っても大丈夫です。

このアンケートから、本文では都民からの期待として「大規模災害への対応」をあげました。

 

他に読み取れる期待としては、普段の災害対応に関するものが上げられます。

例えば

Q4の「119番通報がつながりにくい場合の行動について」のアンケート結果を見てみると選択肢の中で一番長い10コール(30秒)以上待てる」という回答が最多なこと

 

Q5の「119番がつながりにくい時あなたはどうするか」の結果では「つながるまで切らない」「つながるまで何度もかけ直す」が大きな割合を占めていること

上記の2つのアンケート結果からは通報した際はすぐに電話がつながり、今すぐにでも現場に来て欲しいという都民からの期待、東京消防への信頼感を読み取ることができます。

 

これを「都民からの期待」と定義して解答するのであれば、無駄な通報により回線が圧迫されるのを防ぐことが課題になるため

「不要不急の通報やいたずら通報を辞めてもらうこと」

#7119を普及させていく」

ことが課題となり、

「そのために東京消防庁として行うべき施策」

を述べていく展開になります。

 

 

―どのような施策を行うか―

ヒント編において「都民からの期待」を定義する際はアンケート結果上で多くの割合を占めているものから優先順位をつけて判断すると紹介しました。

また、施策を行うにあたっての方針を定義づける判断も同様なのですが、注意したいことはマイナスのアンケートで上位を占めているものを判断材料とすることです。

例えばQ9の救命講習を受けていない理由を選ぶという「マイナス面を問う」アンケートでは

「講習をやっていることを知らなかった」

がトップとなっており、これを優先的に改善するように施策を打つべきだと私は考えました。

逆に「講習を受ける時間がなかった」や「講習に行くのが面倒」との答えをもとに改善するのもいいです。

しかし答えの母数として多いのが「講習をやっていることを知らなかった」人たちなので、こちらを改善するよう施策を打てば上記の2つの答えを改善するよう施策を打つよりも多くの人を救命講習に呼び込めると私は考え、本文にて述べた次第です。

 

―結局は仕事人としての想像力―

ヒント編にて一番最初に述べましたが、「都民が東京消防庁に期待すること」については正解がありません。今回解答するにあたっては、「消防の世論調査」を参考にしましたが、別にこちらの資料を参考にしなければならないというわけでもありません。

一番大事なことは自分が消防士になったと仮定して「都民のメリットや利益」を想像し、考え、答えを作ることです。そのため、受験者が100人いれば100通りの論文ができてもおかしくない論題であるともいえます。

そこで仮に「消防の世論調査」の存在を知らなくても連日のニュースや新聞での報道をふまえて都民の安全を守るためにどのようなことが課題になっているか常に把握しておくことです。

そしてその課題を解決することで都民にどのようなメリットや利益をもたらすことができるのか想像することです。

これは消防士の仕事に限らず、民間の会社でも同様です。社員として働くようになれば例えば常に「顧客を満足させられるよう」仕事を行う必要があり、同時に顧客満足度を上げるために「会社にどのような課題があり、どう解決するか」考え続けなければなりません。

このことから、今回の論題は消防士以前に社会人としての心構えを問う素晴らしい問題であったと私は思っています。


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