H14年 東京消防庁 「将来を予測するという先見性を身に付けるにはどのような努力が必要だと考えますか」
トイレカー 神田救援小隊(東京消防庁 神田消防署)
H14年 東京消防庁
「将来を予測するという先見性を身に付けるにはどのような努力が必要だと考えますか」
の解答例と解説記事になります。
まずはヒント編を読み、論文を書く練習をしてみてください。
<ヒント編>
➀論題分析・構成
今回の論題はシンプルで、
「先見性を身に付けるために必要な努力」
「なぜその努力が必要と考えるか(理由や具体例)」
の順に記述できれば問題ありません。
②「先見性を持つ」とは
論題を見て頭を悩ませるのが「先見性」という語句です。
一見難しい言葉のように聞こえますが、要は結果を想定する力のことともいえます。
ここでもう少しヒントを与えると、
「結果を予測するには、自分の頭の中に物事を予測するために必要なリソースがあるかどうか。」
ということに左右されると私は考えています。
例えばギャンブルの話になってしまいますが、競馬を例に挙げてみます。
競馬に全く興味が無い人にとっては特定のレースの結果など全く予測がつかないはずです。
しかし競馬が大好きで、レースごとの結果や競走馬のデータを常に収集している人にとってはある程度は結果が予測できるはずです。(その予想が必中するとは限りませんが。)
この両者の差を説明するのが上記の「頭の中のリソース」の差であり、今回の論題を解答する際の重要な要素になります。
③練習
ウォーミングアップが終わったところで実際に論文を書く練習をしてみます。
以下の項目を簡単に埋めてみてください。
「先見性を身に付けるために必要な事とは」約100字
「なぜそのように考えるのか(根拠・理由・経験談etc)」約150字
<解答例>
将来を予測する力を身に付けるには、2つの努力が必要であると考える。1つは様々なことに興味を持ち、積極的に知識として吸収することである。2つ目はそれを基本とし、実際に自分で行動してみることである。その行動が成功に終わることもあれば、失敗に終わることもあるかもしれない。しかし、これらの経験がストーリーとして自分の中に蓄積されていくことに意味があると私は考えている。こうすれば似たような事態に直面した際に、自分がどのように行動すればうまく物事が進むのか予測しながら動くことができるのである。このときに自分の中にストーリーがストックされていればいるほど自分の取るべき行動やそうでない行動の選択肢が増える。そしてこれらの選択肢が多ければ多いほど、そうでない者より先見性の精度が上がると私は考えている。
このように考える理由としては駅員のアルバイト経験が上げられる。その業務の一環として券売機付近に立ち、切符の買い方や道案内を行うこともあった。そのため私は券売機で購入できる切符の種類や他社線への様々な乗り換え、勤務駅周辺の公園や建物、店等の地理把握に努めた。それらの知識をもとに、当初は困っているお客様を見かけたら率先して声掛けを行っていた。もちろん案内に対して感謝される場面もあったが、逆に急いでいるのに説明が冗長すぎるというクレームや高齢の方からはもう少しわかりやすく説明してほしいといった意見が寄せられることもあった。駅は老若男女多様なお客様が訪れる場所であり、そこで働く以上は自分本位で仕事を進めてはならないことを知った。そして、困っているお客様を相手にする際はどのように案内すればうまくいき、感謝されるようになるか予測しながら行動する重要性を感じた。それ以降私は知識の習得は当然であるが、まずは相手の身なりや服装、年齢から判断し、手早い案内が必要なのかじっくりわかりやすい案内をすべきか予測を立てる意識を持つよう心掛けている。
今後のスケジュールとしてはハロウィーンや初詣、学生たちの受験シーズンと駅が混雑する予定が目白押しである。これらの想定されるイベントに対して私が取り組まなければならないのは駅付近の高校や大学までの道順、神社や寺等のお参りスポットの把握である。この知識の習得をもとにして各種スケジュールを迎えるわけであるが、ご案内がうまくいき感謝される場合もあれば何らかの理由でクレームになってしまう場合も考えられる。しかしそれもまたストーリーの蓄積であり、どのように行動すればうまくいくか予測を立てる際の選択肢になる。そして少しでも多く選択肢を増やし、後輩たちに予測を立てる際の手本としてふるまえるよう努めたい。
<解説編>
まず今回の論題に日本語としておかしい部分があるので指摘をしておきます。
ずばり「将来を予測するという先見性」という部分です。
何がおかしいかというと同じ意味の言葉が連続しているからです。
「将来を予測する」という言葉と「先見性」は同義の言葉であり、いうなれば「頭に頭痛がする」と同じニュアンスになります。
解答する際は引っかかってほしくないところです。本文を見てもあくまで「先見性」や「将来を予測する力」と一言で主語を作って記述しているところに注目して頂きたいです。
東京消防庁採用担当者さんには丁寧な問題作りをお願いしたいところですね。
➀構成
構成としては
1段落:先見性を身に付けるために必要な事
(知識をまんべんなく吸収する・実際に行動してみる・ストーリーを蓄積する)
2段落:そのように考える理由
(駅員のアルバイト経験・業務知識の習得・実際の接客を通じて行動・予測の大切さを知る)
3段落:まとめ
(今後のスケジュールの想定・自分の行うべき行動を予測・ストーリーを蓄積し後輩の手本になること)
となっています。
②先見性を身に付けるために
ヒント編では競馬を例にとって軽く説明しましたが、
先見性を身に付けるには「知識」と「実行」を同時並行で進めていく
以外ないと私は考えています。
ある物事について全く興味が無い人は、知識が無いためそれが今後どのような結果に至るのか全く想定ができないはずです。
一方ある物事について知識を蓄え、それをもとに実行を繰り返している人は似たような物事に直面した時でも自分の行動がどのような結果になるか大方想像できるはずです。
「知識の収集」と「実行を繰り返す」ことがいい結果になろうとも、そうでない結果になろうともストーリーとして頭に蓄積されていきます。
これがいわば将来を予測する力の源であり、今回の解答の核となる部分であると私は考えます。
最後になりますが皆さんには是非「実行を繰り返す」ことに力を入れて欲しいと思っています。
知識を蓄えるのは自分一人の作業で、気楽にできることです。しかしそれは実行を繰り返してアウトプットしていかなければ意味の無いものになってしまいます。
ただ、実行することで本文中にもあるように失敗することや怒られることもあるかもしれません。
しかしそれを恐れていては知識だけの頭でっかちになってしまい、経験を伴うストーリーが蓄積されていきません。
「先見性を身に付ける」というと大変難しいことのように聞こえますが、要は上記のように小さな努力を積み重ねることで身に付くものです。是非、今後のアルバイトやボランティア、サークルなどで実践し、スキルを高めて頂きたいところです。
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