【 2013年横浜市消防大卒程度】公務員の一件の不祥事が市民や組織に及ぼす影響について、あなたの考えを述べなさい
2013年横浜市消防大卒程度
「公務員の一件の不祥事が市民や組織に及ぼす影響について、あなたの考えを述べなさい」
の解答例、解説記事になります。
まずはヒント編を読み、自分で実際に書く練習をしてみましょう。解答例はヒント編の次にあります。
<ヒント編>
➀:論題分析
今回の論題はやや抽象的なものとなっています。特に公務員の種類について国家か地方か特定しているわけでなく「公務員の一件の不祥事」と大きな枠組みでタイトルが設定されています。
また、
「不祥事が及ぼす影響について、あなたの考えを述べなさい」
との論題であり、
「不祥事を防止するためにどうするべきか」とは問われていないことも注意しておきたいところです。論題の勝手な解釈は減点の対象になりかねません。
②:構成
上記の分析を踏まえた上で構成を考えていきます。
まず述べなければならないのは「公務員の不祥事が市民や組織に与える影響」です。1人の職員が不祥事を起こすとどのような影響が発生するのか上げていきます。
次に論題後半にある「あなたの考えを述べなさい」に対応していくわけですが、注意したいのは「不祥事を防止するために○○するべきである。」と言い切らない論調に調節していく必要があります。
もちろん不祥事についての論題なので自分なりの解決策を述べるのは結構です。しかし、あくまで論題で問われているのは「不祥事の影響についてのあなたの考え」なので先にこちらについて回答した上で最後の段落を使って解決策を付け足すと良いでしょう。
③:練習
ウォーミングアップが終わったところで実際に書く練習をしてみます。
1「公務員の不祥事が組織に及ぼす影響(50字程度)」
2「公務員の不祥事が市民に及ぼす影響(50字程度)」
3「これらの影響についての自分の考え(100字程度)」
(※ヒント:あくまで影響についての考えであり、いきなり予防策を述べないよう注意。上記の影響から組織にどのようなリスクが生じるのか、市民はどのように行動する恐れがあるのか連想、想像し考えを述べていきたいところです。)
4「不祥事の解決(予防)策について(50字程度)」
<解答例>
公務員の不祥事が市民に与える影響として行政機関やそこで従事する職員への不信感の高まりが上げられる。仮に不祥事の発生元が地方自治体であった場合、市民が他の市区町村へ転出する動機を与えてしまう可能性もある。他の自治体への転出は税収減を招き、現状の行政サービスの質が維持できなくなることも考えられる。一方、組織への影響としては市民の協力を必要とする業務の遂行に支障をきたしてしまうことが考えられる。例えば消防の場合、初期消火や災害時の自助、共助体制の確立においては市民の協力が不可欠である。また、それらの習熟を図っていくために各種防災訓練に参加してもらうよう市民へ呼びかけを行う場合もある。このように市民に対して無償の協力を求めていく際、不祥事による不信感があってはスムーズに業務を行うことが難しくなってしまうことが考えられる。
このことから公務員の不祥事は組織全体にまで影響を及ぼす可能性を持ったものであることが分かる。この点が民間企業と異なる部分であり、公務員になるにあたって自覚をしなければならないことであると私は考えている。つまり公務員である以上、職務中であろうとなかろうと自分のとった行動は所属する組織や県や市区町村等の行政単位を代表するものだと常に考える必要がある。その為には常に自分を律していかなければならない。
ただ、公務員はどのような職種であっても組織で運営されている以上は自分だけ律していればいいというわけではない。組織に所属する全員が上記のような考えの下、不祥事に手を染めることなく日々公務に従事していくことが理想である。しかし、自分を律すると同様に他人にも規律を強要すると逆に窮屈な職場となり、かえって不祥事を招きやすくなってしまうと私は考えている。そこで私はお互いを気に掛け合ったり、上司に相談しやすい職場環境の確立を対策として上げたい。具体的には他人について普段と様子が異なっていたり、仕事上の悩みを抱えていそうだと感じた場合はこちらから声を掛けることで問題を共有するのである。また仕事上においても正直に報告、連絡、相談することを徹底し、上司としてもその相談を何でも受け止める姿勢を見せていくことも重要だと考えている。自分を律することと、職場環境形成における2つの取り組みがなされれば職員一人一人が互いにコミュニケーションを深めることができ、悩みは一人で解決しない連帯感が生まれる。この連帯感こそ不祥事発生のリスクを低減し、組織や市民への悪影響を抑えることができると私は考えている。(1039字)
<解説編>
➀:構成
1段落目「不祥事が市民や組織に与える影響・その影響からどのような事態を招くか」
2段落目「不祥事についての考え(民間企業で働くこととの違い、自分を律すること)」
3段落目「不祥事を予防していくためにどうするか(自分を律する・他人を気に掛ける・上司への連絡報告相談)」
となっています。
②:論題の解釈
ヒント編でも述べましたが今回の論題はやや抽象的なものであるため、慎重に解釈していく必要があります。
小論文を記述していくにあたって一番意識しなければならないのは「問いに答えていくこと」です。そのため、論題に問われていないことを述べてしまうと減点どころかそもそも読まれずに不合格にされてしまう恐れがあります。
これを踏まえた上で論題をもう一度見てみます。
「公務員の一件の不祥事が市民や組織に及ぼす影響について、あなたの考えを述べなさい」
この論題についてまず答えなければならないのは「不祥事が市民や組織に及ぼす影響」なのはヒント編で見た通りです。
しかし次の「あなたの考えを述べなさい」をどう解釈するかが問題です。もちろん「不祥事の解決策について」とは一言も問うていません。ではどう記述するのかというと、不祥事が及ぼした影響がどのような結果をもたらすのか想像した上で記述していくべきかと考えます。
本文では
「市民の不信感」
という影響から「他市町村への転出、税収減」を想像しています。
また、組織については
「市民の協力が得られなくなる」
という影響から「防災行政上のリスク発生」を想像しています。
想像とは自分の頭で考えることであるため、上記の論述で解答としてはおおむね問に答えたことになるかと思います。
このように見ると今回の横浜消防の論題は「公務員として働く自覚」を受験生に考えさせる非常に素晴らしい問題であったかと思います。2021年東京消防庁のDXデジタルトランスフォーメーション問題よりよっぽど公務員受験生に解答してほしい問題です。
③:不祥事の防止について(理想の職場・上司とは)
問いに一通り答えたところで最終段落にて不祥事の防止について述べています。
私の考えではありますが、行政組織も人間の集団であるため不祥事は根絶できるものではないと思っています。
そこで重要なのが
不祥事発生のリスクを低減していくこと
だと考えます。
ではどのようにして対策するのかというと本文でも述べた通り「他人を気に掛ける」、「報告連絡相談の徹底」の職場環境の確立です。
つまりコミュニケーションが活発な職場を作るべきだということです。
一人で相談事を抱え込んだり、
上司の威圧によって部下が委縮する
ような職場はまさに不祥事リスクの温床といっても過言ではありません。このような職場では何が起こるかというと、
「一人で問題を解決しようとする」
「一人で勝手に思い込み行動する」
といったことが発生します。これが業務上の不正や意図しない重大なミスにつながったりします。組織で仕事をしている以上は他人と連携を取ったり巻き込みながら行うことを意識しなければそのスタッフはいないも同然の無駄な存在です。
④:将来的に上の立場を目指したいなら
このように考えると理想の上司とは部下から業務上のことについて何でも相談される人物であると考えられます。
部下に物事を抱え込ませず、業務上の相談はなんでも受け止める姿勢を見せることが部下からの信頼につながる一つの方法かと思っています。また、相談されるのを待つだけではなく機会があれば部下への声掛けや気遣いがあってもいいかと思われます(上司自身も忙しくなるため、しょっちゅうできるとは限りませんが・・・)。
よって昇進し上の立場を目指す際の動機に必要なものは給料や名声ではなく「職場をより良くしたい」といったことになるかと考えられます。よって公務員や民間問わず社会人なりたての時期はその組織の戦力になることを目指すのは当然ですが、将来的に上の立場を目指すのであれば同僚や上司問わず明るくコミュニケーションを取り、連携して仕事をすることが上司になるにあたっての練習になるのではないでしょうか。
※ちなみに過去の記事においてコミュニケーションに関する解説について述べたものがあります。参考に是非どうぞ↓↓
平成27年度 東京消防庁Ⅰ類2回目「組織内でのコミュニケーション不足が組織全体に与える影響をあげ、コミュニケーションを活性化させる方策について考えを述べよ」
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿