平成20年度堺市消防 「社会人として組織において仕事をしていく上であなたの個性と組織のルールの両立についてどのように考えるかあなたの考えを述べなさい」

2022年4月4日月曜日

 


品川消防署 五反田出張所から出動する五反田2(小型ポンプ車)


平成20年度堺市消防

「社会人として組織において仕事をしていく上であなたの個性と組織のルールの両立についてどのように考えるかあなたの考えを述べなさい」

の解答例と解説記事になります。

 

まずはヒント編を読み、自身で論文を書く練習をしてみてください。

 

<ヒント編>

➀論題分析・構成

論題はシンプルで自分の個性と組織のルールの両立についての考えが問われています。

よって構成としては

「個性と組織のルールの両立についての考え」

「そのように考える理由と具体例」

の順で記述できればOKです。

 

次に論題にある

「あなたの個性」

という言葉ですが、これは

「あなたの価値観」

と言い換えても問題ありません。要は組織を組織たらしめているルールと自分の価値観をどのように釣り合いにかけていくかについての考えを述べていけばいい訳です。

 

②優先されるべきなのはどちらか

練習の前に少し考えたいことは

「会社のルール」

自分の個性(価値観)」

のどちらが優先されるべきなのかということです。


いかなる組織や会社もそれぞれの存在を維持していくにあたってのルールが存在し、所属するメンバー全員がそれぞれの価値観の下に勝手な行動を起こしていてはそれが成り立たなくなります。


しかし逆にメンバー全員が組織のルールに基づき、ルーティンワークを行っていてはその組織は時代や環境の変化に対応できない団体になり淘汰されてしまいます。

一見、相反する二つの要素ですがヒントとしては

「自分が組織の責任者であったとして、その組織を維持・発展させていくにあたり新しくメンバーになった者にどのように両立してほしいか」

を考えてみるといいかもしれません。

 

③練習

ウォーミングアップが終わったところで実際に書く練習をしてみます。

各項目について100字程度で解答してみてください。


「個性と組織のルールの両立についての考え」100


「その理由」100

(ヒント編の最後で触れた「自分が組織のトップだったらメンバーにどう両立してほしいか」がそのままあなたなりの理由として述べることができます)

 

 

<解答編>

組織において仕事を行っていく上で私はまずその組織のルールを優先すべきであると考えている。しかしそれにのみ拘っていては組織としての変化は起きず、同じことの繰り返しになってしまう。時代や社会の変化に伴って組織を適合させていくためにも常に自分の個性や考え方が発信できるときは積極的に発信していくべきであると考える。

 

このように考える理由として駅員のアルバイト経験があげられる。鉄道の運行に関わる仕事ということもあり、安全の確保や非常時の対応マニュアルが細かく定められていた。それはアルバイトである私も順守すべきいわば会社としてのルールである。私は朝のラッシュ時間帯に駅社員の方々とホームに立ち、責任者の指揮監督の下に、マニュアルに基づき列車の安全な発着を監視したりお客様の誘導を担当した。当然社員の方々も同様に業務にあたっているわけであるが、責任者含めた彼らは朝の業務後に定期的にミーティングを実施し自分が気付いた業務上の意見を提案し合っているのをしばしば見かけた。そのミーティングはいわば現行のマニュアルを見直すものであり、安全に対する自分の考えや気付いたことなど自分の個性や考えを発信する場であると感じた。

 

私はこのアルバイトで働き始めた当初は電車の運行に関わる仕事である以上、マニュアルや上司の指示に従った業務の繰り返しであると考えていた。しかし実際は鉄道を取り巻く環境は様々な要因が絡み合い、一つとして同じ状況の事故はないといっても過言ではない。確かにマニュアルや上司の指揮に従うことは鉄道の安全な定時運行に欠かせないものではある。しかしそれを踏まえた上で、ルーティンワークに陥らずいかにしてリスクの芽を摘み事故の発生を防止していくかは個人の個性の発揮や意見の発信にかかっていると考えられる。

 

消防の仕事についても同じであると私は考えている。実際の災害対応や訓練ではあらかじめ決められた安全対策や指揮命令系統に従った活動を行う。そこは人命がかかった現場である以上はルールに従うことが原則であり、個人が逐一個性を発揮する余地はない。しかしそれらが終了した後には上司を含めたメンバーが集まり、活動の振り返りを行うタイミングがある。その場は上司と部下が対等な立場となり、互いに自由に意見や個性を交わし合うことで組織としてより安全で迅速な活動マニュアルを練っていく場であると私は考えている。それを踏まえた上で、私は駅社員の方々が行っていたように自分が気付いた些細なことでも提案を発信し、組織がルーティンワークに陥らず変化や改善を遂げていくことの支えになりたい。

 

 

<解説編>

➀構成

構成としては

1段落:「個性と組織のルールの両立についての考え」(まず組織のルール優先・環境の変化に対応するために自分の個性を発揮


2段落:「そのように考える理由と具体例」(鉄道でのアルバイト経験・会社のルール厳守の一方、よりよいマニュアル作成のための個人の価値観の発信)


3段落:「駅業務を例にした会社のルールの重要性と個人的価値観の重要性の確認」


4段落:「消防業務を例にしたルールの重要性と個人的価値観の重要性の確認」

となっています。

 

 

②ルーティンワークでは組織は成り立たない

本文でも述べているように私は駅員のアルバイトを始めた当初、業務としては列車の定時運行をひたすら管理するルーティンワークが主な仕事と思っていました。

しかし実際はホーム上ではどのような要因がどのように組み合わさって事故や列車遅延が発生するか全く予想がつかない現実がありました。そして列車の定時運行を支えていくためにも、どのようなリスクが存在し、どのような事故が予測できるのか常にアンテナを張って業務に取り組む駅社員の方々の姿が印象的だったのを覚えています。


社員の方々は責任者の指揮やマニュアルに従い、チームとして列車の定時運行を支えていると同時に常にアンテナを張ることでそれぞれの価値観に基づいてリスクを見つけていました。そしてそれを業務後のミーティングで上司や部下の垣根を越えて発信し合うことで事故を予防しようと努めていたわけです

このようにルールに従って業務に取り組む一方で、個人の価値観を発揮していかなければならないのは消防でも同じだと考えます。

本文中でも述べたように実際の災害での活動や訓練の後にはその振り返りを行うケースがほとんどです。現場で判断したことが本当に最善の選択だったのか、それともほかにより良い選択ができたのか、より効率の良い活動ができたのか等について反省会を行うわけです。これはどの消防本部でも採用説明会の業務紹介で説明されることかと思います。

ここで大事なことこそが些細なことでも自分の個性に基づいた意見発信を行っていくことであり、所属する消防組織がルーティンワークに陥ることなく時代や環境の変化に対応していくために重要なことになってくるということです。

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