資料「救急車を呼んだ理由」から読み取れる課題と対応策について、あなたの考えを具体的に述べなさい

2021年1月8日金曜日

 


東京消防庁Ⅰ類 令和元年1回目

 

資料「救急車を呼んだ理由」から読み取れる課題と対応策について、あなたの考えを具体的に述べなさい

 

の解答例、解説記事になります。まずは<ヒント編>を読み、自身で論文の簡単な骨格を作ってみてください。解答例はヒント編の次にあります。(※資料は省略)

 

<ヒント編>

1:論題分析・構成

今回も論題はシンプルです。資料から課題を2つ程度まで上げてそれに対する自分の考える対策を述べていけば大丈夫です。よって構成は

 

資料から読み取った課題2つ程度まで)

それ(それら)に対する自分の考える対策

 

となります。

 

 

2:注意点

1つだけ注意したいことは書き始めです。

東京に限らずどこの消防本部でも救急出動は年々増加し続けているのはみなさんご存じかと思われますが、今回記述していかなければならないのはそのようなことではありません。問題で問われているのはあくまで資料から読み取れる課題であり、あなたの知識ではありません。

 

つまりヒント1で紹介したように最初に書かなければならないのは資料から読み取った課題です。その対応策として書いたあなたの考えを補強する際に初めて知識を使うべきなのです。解答する際は注意していきましょう。

 

 

3:練習

ウォーミングアップが終わったところで実際に書く練習をしてみましょう。構成はヒント1の通りでそれぞれの項目ごとに100200字程度で埋めてみてください。

(※1つだけ課題をあげる場合は、「課題1」と「課題1の対策」のみ埋めてみてください。)

 

・資料から読み取った課題1100字程度)

・資料から読み取った課題2100字程度)

・課題1の対策200字程度)

・課題2の対策200字程度)

 

 

 

<解答例>

 資料から読み取れる課題は軽症と重症の判断がつかなかったとの回答を減少させていくことだと考える。なぜなら生命の危険を感じた、自力で歩けないといった急を要する理由以外で前年比一番の伸びが見られるからだ。もちろん本当に身の危険を感じたのであれば救急車を呼ぶべきであるが、実際のデータにおいては搬送された患者の50%以上が軽症と診断されている。このことからむやみな通報が本当に救急車を必要とする人の妨げになりうることが十分に考えられる。また救急車や救急隊員の数には限りがあり、いざというときに必要な人のもとに急行できることが救急サービスの理想とした場合、安易な通報により人的物的資源が無駄にそれらに割かれてしまうのは救急サービスの質の低下を招きかねない。

 

 救急車が中等症、重症者のもとに重点的に急行できるようにするためにはまず軽症重症の判断がつかなかったとの回答率を下げていくことが重要であり、そのためには#7119の周知と実践的な訓練の実施を上げたい。防災訓練やイベントなどを通じて声掛けや案内を実施しているところではあると思われるが、資料を見てみると年々微増しておりその成果は出ていることがわかる。だがまだまだ活用率が高いとは言い切れない。


 #7119は知ってもらうだけでなく、実際に使えるようになってもらうべきものであり、私としては軽症と重症の判断がつかなかったとの回答に対しておおむね同じ数字になるべきであると考えている。具体的には症状の程度の判断ができず、#7119を使った結果として救急車を呼んだという流れができると理想的である。このような流れができれば結果として両者がおおむね同程度の数字となって結果に表れるはずである。ただ、傷病者にはいつどこで遭遇するか分からない。傷病者になるのは自分か他人かもわからず、症状も状況も様々なケースが想定できる。そのようなシーンにおいて症状の判断に迷ったらすぐ#7119を押せるような訓練を取り入れてはどうかと考える。例えばまちかど防災訓練の機会を使い、自宅や駅、職場など様々な状況や症状を想定して#7119を使ったやり取りの練習を行うのである。そして軽症だった場合と救急車を呼ばなければならない場合にどのような流れになるのか訓練を通じて体感してもらうのである。そして1人でも多くの都民が#7119をスムーズに利用できるようになれば、中等症や重傷者のもとに重点的に救急隊が駆け付けられる質のいい救急サービスが実現可能になると考えている。

 

 

<解説編>

1:構成

1段落目(資料から読み取れる課題)

軽症と重症の判断がつかなかった/実際は半数以上が軽症/むやみな通報が救急サービスの質低下を招く

 

2、3段落目(課題への対応策)

軽症と重症の判断がつかなかったケースを減少させるため、#7119の周知と訓練/いざというときに迷いなく使えるように様々な状況を想定した訓練を提案/結果として救急サービスの質向上が見込める

 

の構成となっています。

 

 

2:救急搬送された患者の半数以上が軽症!

本文でも述べましたが、年度によって多少の上下はあるものの救急搬送された患者の半数以上が軽症と診断されています。

(※詳しくは「東京消防庁統計 救急」等のキーワードで検索です!)

「救命曲線」というワードを聞いたことがあるでしょうか。心臓と呼吸が止まった重篤な患者に初期対応を実施した際に助かる確率は時間に大きく左右されるという定義です。


一般的には救急車が来るまで何もしなかった場合、蘇生できる確率は約4分後の処置開始で20%程度、約7分後の開始で10%程度のものとなります。重症者に対しては時間との戦いになることが十分にわかるかと思います。

(※数字だけ見ればかなり低いように思えますが、バイスタンダー“傷病者の近くに居合わせた人”がすぐ救命処置を行えば蘇生の確率はそれぞれ約2倍も上がります。救命講習の大切さがよくわかります!詳しくは「救命曲線 バイスタンダー」等で検索です。)

 

32段落目の数字の話について

2段落目に

「“軽症重症の判断がつかなかった“と“#7119の使用“がほぼ同じになるはず」

という表現がありますが、イメージしづらい方のために解説をしておきます。

 

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例えばある症状を訴える10人の患者がいたとしてそれぞれの症状の程度がわからなかったとします

 

たまたま付近に居合わせたバイスタンダー10人がそれぞれ#7119に相談。10人中4人のみが中等症以上と判断され救急車要請のアドバイスのもと、それに従い119番したとします

 

この際、計4人を搬送するための救急車が4台出動することになります。

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このように見ると程度の差こそあれ最初は10人いた患者に対し中等症以上の4人の患者に救急サービスがいきわたっていることがわかります。


つまりこの例で言えば中等症以上の患者4人と救急車の要請数4台が#7119の利用によって同じ数になっており、これが本文で述べた「“軽症重症の判断がつかなかった“と“#7119の使用“がほぼ同じになるはず」の意味になります。

 

これは極端な例であり、実際には症状の相談の他にも様々な事例が考えられます。よってアンケート結果としてピッタリ同数になるとは思っていません


ただ、症状の軽重の判断に迷ったからと言ってすぐに救急車を呼ぶよりかは#7119を通じた相談を挟むことでより効率のいい救急サービスの展開が可能になると考えたということです。

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