資料「新規学卒者就職率と3年以内離職率【大学】【高校】から読み取れる課題を2つ上げ、それぞれの対応策についてあなたの考えを具体的に述べなさい」
平成30年度 東京消防庁Ⅰ類1回目
資料「新規学卒者就職率と3年以内離職率【大学】【高校】から読み取れる課題を2つ上げ、それぞれの対応策についてあなたの考えを具体的に述べなさい」
※資料は省略しています。
の解答例、解説編になります。まずは<ヒント編>を読み、論文を書く練習をしてみてください。
<ヒント編>
●論題分析・構成
今回の論題はシンプル。資料から読み取れる課題を2つ上げ、自分の考える対策について論述できれば大丈夫です。この時に注意したいことが1点あります。それは大卒と高卒2つのグラフが用意されているので、それらから1つずつ課題を見つけたいということです。どちらか1つのグラフから2つ課題を見つけても不正解ではありませんが、資料を半分しか見ていないととらえられかねないのでお勧めはできません。
よって構成は、
―パターンA―
課題その1
課題その2
それぞれの対応策
―パターンB―
課題その1
その対応策
課題その2
その対応策
のどちらかになります。
●資料のどの部分に注目するか?
では与えられた資料のどの部分に注目して課題を見つけるかということについてみていきます。結論としては前回の記事
資料「高齢者人口及び割合の推移」から読み取れる問題点を上げ、その対応策についてあなたの考えを述べなさい。
でも解説したように「比較の視点」を持ってグラフを見ていくことをお勧めします。せっかくデータが平成9年から29年まで示されているので、全体の数字の流れを比較して課題を見つけられるとベストです。
ちなみにですが、大卒高卒の離職率30%台40%台は高いと考えるでしょうか、それとも低いと考えるでしょうか。この部分も含めて慎重にデータを参考にして論述していく必要があります。
●練習
ウォーミングアップが終わったところで実際に書いてみる練習をしてみます。上で述べたヒントや構成を参考に、各項目を簡単に埋めてみてください。今回はパターンAの方でやってみたいと思います。
課題その1(100字程度)
課題その2(100字程度)
それぞれの対応策(250字程度)
<解答例>
資料から読み取れる課題の1つは大学のグラフにおいて離職率がほぼ30%台を維持しており、統計が始まっている平成9年からほとんど改善が見られないことである。2つ目は高校のグラフにおいて平成22年度以降の就職率上昇に伴って離職率も上がってしまっていることだ。平成18年度以降2年間は就職率上昇に伴って離職率が順調に下がっているものの、22年以降を見てみると離職率が下がるどころか若干上昇しているのである。
大卒の離職率を下げていくためには学生自身が興味や性格に合った仕事につけることが一番である。世の中には様々な業種や職種が存在するが、結局のところ民間企業が存在する理由は利益を生み出すことであり、公務員は国や地域全体の利益を創出することにある。そのため、私の考える対策は学生自身が志望する業界や企業がどのような業務を通じて利益を生み出しているのか、そして自分がどのように貢献できるのかを具体的に考えさせることである。そこで、大学の就職支援担当の部署から学生にそのようなことを考えさせるレポートを課すことで自分の言葉で説明できるように支援する体制を作るべきだ。そしてレポートの作成を通じて志望先の戦力の一員となれることを説明できるようになった暁には不本意な就職が減り、結果として離職率の低下となって表れると私は考える。
次に22年以降にみえる高卒離職率の改善について、例えば就職の理由が家庭の経済事情によりやむを得なかった、勉強がしたくないからといったものによる場合は不本意な就職になり早期離職につながると私は考える。就職率が上昇していくのは喜ばしいことだが、その数字の裏に不本意な就職も含まれているならばそれらを減らすように対策していかなければならない。
学問に興味がない高校生に対しては大学や専門学校が年間通して文系理系問わず様々な内容のオープン授業を実施することを対策として上げたい。大学や専門学校は高校では知りえなかった知識を習得できる場であることをイメージしてもらう趣旨である。大学生活を通じて新たな興味関心を持ち、それを就職活動に活かしてもらうことが本人にとっても企業にとってもより良い就職になると私は考える。
家庭の経済事情により進学を断念してしまう場合には大学や専門学校側が学費の支払いについて事情に合わせたプランを提案する相談会の実施を上げたい。例えば在学中と卒業後の数年間に渡って払っていく分納や、奨学金を使うケース、入学試験にて良い成績を収めた場合に割引を認める等入学前にあらかじめ教育機関と家庭との間で費用について共有を行ってみてはどうかと考える。そうすれば、大学や専門学校側としても学問に興味のある優秀な高校生を迎えられる機会の創出にもつながってくる。
このように勉学への無関心や経済的事情によらない多様なキャリアの形成を支えていくことが結果として高卒生の離職率の減少へとつながっていくと私は考える。
<解説編>
●構成
1段落:
課題1と2について
2段落:
課題1(大卒離職率について)の対応策―レポートの作成―
3、4,5段落:
課題2(22年度以降の高卒離職率について)の対応策―経済事情対策や学問への興味の掘り起こし―
の構成となっています。
●大卒離職率(30%台)と高卒離職率(40%台)は高いのか低いのか?
本文では離職率の高低についてはあえて言及しませんでした。その理由としては比較する対象が無かったからです。例えば他にアメリカや中国等の他国のグラフも用意されており、それらを比較して初めて日本の高卒大卒の離職率は高いか低いかが評価できることになります。今回のように日本のグラフだけしか用意されていない場合、単純に離職率が高いか低いかは言いきれないため注意が必要です。あくまで大卒の離職率30%台、高卒の離職率40%台という「事実」が存在しているだけです。
●課題を上げるにあたって資料の注目すべき部分とは
ヒント編でも述べましたが、資料を読み取るにあたってはデータ全体の把握と比較の視点が必要です。
今回私は大卒においては離職率について多少上下の振れ幅があるものの、毎年30%台を維持している状態で改善が見られなかったためこの部分を課題として上げました。
また、高卒においては平成18年度以降の2年間は就職率上昇に伴って離職率が順調に下降しているのがわかります。しかし22年以降は就職率上昇に伴って微増の傾向を見せており、はっきりとは言い切れませんが何らかの原因があってこのような数字の動きがあると考え課題として上げてみました。
●東京消防庁には丁寧な問題作りをお願いしたい
ちなみにですが、この場を借りて欲を言わせてもらうと「高卒生が就職を選んだ理由」のグラフなり資料も併せて載せて欲しかったところです。ただ単に高卒生の就職率離職率のグラフのみを提示されても「なぜ進学ではなく就職を選んだのか」がわからなければ改善案を提示するにあたって推測を混ぜるしかできなくなってしまうからです。
そこで今回私は高校生の離職率の改善を提案するにあたって推測をしたのが不本意な就職のケースです。本文中にも述べましたが
「家庭の経済事情がよくないから」
「勉強をしたくないから」
といった理由で本心からではなくやむを得ない状態で就職を選んだ結果として離職率も上がっているのではないかという推測です。
●おわりに
今回の論題は学生の就職率に関する資料の読み取りといった消防とはあまりかかわりがないテーマでした。
しかし解答例を見ても分かるように、難しい知識は全く必要ありません。あくまで「比較する視点」を持ち、データ全体を把握した上で問題文で聞かれていることに忠実に解答していけば合格できる論文が書けるのです。今後どのような論題が出題されていくのかはわかりませんが、いかなる論題であったとしても問題文で聞かれていることに対して今ある知識をフル活用して正面から答えていくことを意識して頂きたいと思います。
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