平成23年度瀬戸市消防「価値のある仕事とは?」

2023年5月2日火曜日

 



双腕重機”アスタコ”と重機搬送車(川崎市消防局 中原消防署)


平成23年度瀬戸市消防

「価値のある仕事とは?」

の解答例と解説記事になります。まずはヒント編を読み、論文を書く練習をしてみてください。

 

<ヒント編>

➀論題分析

論題は一見非常にシンプルなのですが、「仕事」をどう解釈するかが解答する上でのカギになります。

 すなわち

人が金銭的見返りと引き換えに労働する「職業(弁護士や医者、パイロット等)」

直接的、具体的に解釈するのか、

「所属する組織の中で、組織のために個人が行う行動」とより抽象的に解釈するのか


2択が考えられます。特に後者は金銭的見返りの無い組織(例えばサークルや部活、ボランティア組織)内での個人の行動も含められる解釈になります。

 

このような論題が公務員(消防士)採用試験にて出題されている意図を考慮しながら、どちらの解釈で論を展開していけばいいかしっかり考えて頂きたいところです。

 

 

②練習

ウォーミングアップが終わったところで実際に論文を書く練習をしてみます。下の項目をそれぞれ150字程度で埋めてみてください。

 

"価値のある仕事の自分なりの解釈とその理由」


「価値のある仕事をしていくために自分は今後どのように行動していくのか」

 

 

<解答例>

価値のある仕事とは所属する組織のために個人が自発的に考えて行動することであると私は考えている。一見、仕事とは組織内で金銭的見返りを前提として個人が行動することと捉えられるように思える。しかし、いかなる仕事であろうとも組織のルールや規範に従って行動している以上、仕事とは結局は所属する組織の発展に貢献する行動であると解釈できると考えている。そしてそのように解釈すれば、例えば営利団体でないサークルや部活動においても組織のために行動することは仕事であると考えることができる。ただ、その仕事が組織にとって価値あるものと判断されるには、それが自発的な考えを伴ったものである必要があると私は考えている。理由としては組織のルールや指示されたことにのみ従って仕事を行うのではその組織が発展しないからである。状況や時代の変化に応じて柔軟に組織を発展、成長させていくためには所属する個人が自発的な考えの下に価値ある仕事を行っていく必要があると考えている。

 

私が自発的な考えを持って仕事を行った例として駅員アルバイトの例が挙げられる。業務内容としてはラッシュ時間帯の列車とお客様の安全監視や券売機前でのご案内である。特に券売機前での業務の際は定期券や特急券の購入、電子マネーのチャージ等多様な目的によるお客様で渋滞し、駅構内のスムーズな移動が妨げられてしまう事態を目の当たりにした。そこで私は並んでいるお客様一人一人に要件を伺い、目的ごとにそれを受け付けている券売機前、あるいは有人窓口に振り分けることで行列を圧縮するよう努めた。また、それでも行列がさばききれない場合は事前の書類記入が必要なお客様に該当の書類を渡し、あらかじめ記入してもらうなど少しでも効率的に手続きが進められるよう努めた。その結果、スムーズな案内によりお客様から感謝されるケースや駅社員の方からおかげで窓口業務の負担が減ったとの言葉を頂く機会もあった。この取り組みを実行するにあたり券売機操作や取り扱える切符の種類、特急券の購入手続き等多くのことを自主的に学ばなければならなかった。また、学んでいくうちに本当に自分にできるようになるのか不安になることもあった。しかし、結果としてお客様や上司からの感謝という形で帰ってきたことで自分が価値ある仕事をできたと実感することができた。

 

今後、社会人として働いていくにあたりアルバイトの時以上に自分で考えて行動しなければならない場面が増えるはずである。自主的な行動は不安も付きまとうかもしれないが、それでも挑戦を続けて結果を残すことが価値ある仕事につながっていくと私は考えている。

 

 

 

<解説編>

➀構成

1段落「価値のある仕事についての定義」

(金銭的見返りがあろうとなかろうと組織の成長、発展に貢献する行為が価値のある仕事・自発的な考えの下に行動することが価値を生む)

 

2段落「価値のある仕事の具体例」

(駅員のアルバイト経験・駅構内の混雑を改善するため独自に取り組んだ・客や上司からの感謝)

 

3段落「まとめ」

(社会人として価値ある仕事をするためにどう行動していくか)

 

の構成となっています。

 

 

②「価値のある仕事」の解釈

まずヒント編で触れた「仕事」についての解釈を述べたいと思います。

解釈としては

「具体的な職業」

「組織のために個人がとる行動」

2種類あることを紹介しました。そして本文では後者の解釈を利用して論を展開しています。

 

一方、前者の「具体的な職業」の解釈を使わなかった理由としては差別や偏見につながるからです。

例えば

医者という仕事は人の命を救っているから価値がある」

という考えがあった場合を想定してみます。

 

命を救う現場には医者の他にも看護師や病理医(病気を科学的な観点から評価する医者)、製薬会社手術や治療に使う機器を製造する会社など多くの人や会社が関わっています。


また、病院に到着する前には消防による救助や救急搬送も関わっている場合もあります。さらにはマニアックになりますが消防車や救急車を造っているメーカーだって存在しています。

 

一口に命を救う仕事といっても、そこには多くの職業や人が関わっており、「価値ある仕事」として特定の職業をあげたところで理屈が破綻してしまうと同時に視野の狭さや固定観念が露呈してしまうのが必至です。

 

つまり、今回は公務員(消防士)採用試験での出題であるという意図を踏まえると、「組織のために個人がとる行動」こそが「仕事」と解釈されるべきであるという結論になります。

 

そのように捉えると「価値ある仕事」とは「組織の成長や発展のために個人が主体的に行動すること」と考えることができます。

 

 

③価値ある仕事をするということ―沖縄旅行の際に見た航空会社の取り組み―

本文でも述べましたが、私は「価値のある仕事」とは自分で考えを持ち、課題に対して自発的に動くことと解釈しています。前例踏襲、あるいは上の指示通りにルーティンワークをしているだけでは組織が成長、発展せず変化に対応できない体質になってしまうからです。

 

本文では私のアルバイト経験をあげましたが、別の例として私が昨年度(2022年)に沖縄旅行時に利用した航空会社の事例を紹介したいと思います。

 

羽田空港からの出発で那覇空港到着までは約2時間半の空の旅でした。機体が離陸し、上昇が終わって安定したところで突然パイロットやCA含めた全乗務員の自己紹介(趣味の話や出身地紹介等)が始まりました。一通り自己紹介が終わるとCA主催の機内ジャンケン大会が始まり、子供たちが盛り上がっていました。

 

今考えると上記の取り組みはスタッフに親しみを持ってもらい、機内の時間を飽きさせないことと次回の旅行にも自社を使って貰うリピーター獲得のための仕事であったと思われます。注目すべきなのは自己紹介にしろジャンケン大会にしろ予算はほぼかかっていないことです(ウェルカムドリンクやジャンケン大会の景品には多少かかっているかもしれませんが)。

 

当時はコロナ禍で観光客数が厳しい状況でした。しかし、今回沖縄旅行で自社を選んでくれたことに感謝し、わずかでも顧客をつなぎとめようという意図でパイロット含め機内スタッフ総出で自分達にできることを考えた結果の行動だと私は考えています。

 

このようにどのような状況においても、組織のために自分達に今できることを全力でやることこそが「価値のある仕事」といえるのではないでしょうか。

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