平成23年度京都市消防「最近5年間で最も悔しかったことと、その経験から学んだこと」

2023年4月9日日曜日

 

電源照明車 柚木SS(東京消防庁 八王子消防署 柚木分署)


平成23年度京都市消防「最近5年間で最も悔しかったことと、その経験から学んだこと」の解答例、解説記事になります。


まずはヒント編を読み、論文を作る練習をしてみてください。

 

<ヒント編>

➀論題分析

論題は非常にシンプルで、ポイントとなる部分は「直近5年間で最も悔しかったこと」です。「“最も”悔しかったこと」と問われると身構えてしまいますが、問われていることは自身の失敗経験です。

 

しかし、失敗経験をネタにした論文を書いたことがある場合それをそのまま流用するのは危険です。

理由としては「悔しいと思った理由」が述べられていない可能性があるからです。失敗した経験のみ詳しく述べられており、肝心の「悔しいと思った理由」が記述されていなければ答案としては失格です。

 

つまり、失敗経験をネタにした論文を流用したいのであれば「失敗した経験」のどのような点において「悔しい」と感じたのか読み手に分かるように改良しなければならないということです。

 

 

②練習

ウォーミングアップが終わったところで実際に論文を書く練習をしてみます。構成としては上記で解説したように、失敗経験と悔しいと思った理由そしてそこからどのようなことを学んだのかという2段落構成です。

 

では下の項目をそれぞれ100字程度で埋めてみてください。

 

「直近5年間での失敗経験とそれが悔しいと思った理由(約100字)

「それからどのようなことを学んだか」(約100字)

 

<解答例>

最近5年間で最も悔しかったことは私が空手サークルの会計担当として行った仕事がほぼすべてやり直しとなったことである。当時、サークルの役職決めの際に前任の会計担当者と連絡が取れない状態で私が会計を引き継ぐことになった。前任者が残した過去の帳簿を見ながら大まかな仕事の流れは把握できるものの、やはり手探りで行わなければならない場面もまた多くあった。それに加え、会計に関して経験のあるサークルメンバーもいない状況の中、これは自分に任された仕事であり、分からないことも自分で全て解決しなければならないと思い込んだ。そして半年経過した頃、サークル管理委員会による中間検査のため帳簿を提出したところ、金額を書く順番や領収書の貼り方などについて非常に多くの指摘を受けた。その場で私は委員会から帳簿の正式な記入方法や各種マニュアルの指導を受け、結果として新しい帳簿に半年分を記入し直すこととなった。それから4日間はサークルの練習に出る代わりに帳簿の記入にひたすら取り組む始末となった。会計についてマニュアルを知っている者は私だけの状況のため、友人や先輩も手伝おうにも手が出せない状況であった。練習に出られず、半年分たまった仕事を1人でひたすらやり直さなければならないことは非常に悔しい思い出であった。

 

私がこの経験から学んだことは、自分で抱え込まないことの重要性である。今回のケースによる影響は自分に対してのみであったが、仮に社会人として仕事を行う立場であった場合はそうはいかない。物事を自分で抱え込んだ状態でミスが発生した場合、チームで仕事を行っている同僚や上司にとっては寝耳に水であり、突然の対応に時間を取られてしまう。自分一人のせいで業務の効率を悪化させてしまうことが考えられるのである。例えば消防の消火、救急、救助業務においては危険な現場で活動することもあり、チームでの連携や仲間同士のコミュニケーションが重要になってくる。そのような場面において自分で抱え込むようなことをすれば、自分だけでなく仲間や要救助者の命をも危険に晒すことにもつながる。今思えば、会計の仕事を引き受けた時点で他のサークルや団体で会計を担当している友人や知り合いに相談するべきであった。より良い仕事を行うためにも他人と対話すること、頼ることの重要性を実感した経験であった。このことから私は社会人としていかなる仕事を行うにしてもコミュニケーションを大切にし、自分で全てを抱え込まない意識を持ちたい。そして仲間を頼ることや対話を通じて自分の意思を積極的に表すことを通じてチームの一員としていい仕事ができるよう努めたい。

 

 

<解説編>

➀構成

構成としては

1段落目「失敗経験と悔しいと思った理由」

(会計の仕事を1人で抱え込み、間違いに気づかない・ミスの蓄積がそのまま自分に返ってきたことが悔しい)

 

2段落目「学んだこと」

(自分で抱え込まないこと・コミュニケーションや積極的な意思表示に努めいい仕事をしたい)

 

の構成となっています。

 

 

②抱え込むことの危険性―NHK連続朝ドラに見る「抱え込む人間」の末路とは―

 

自分で物事を抱え込むことの危険性は本文で見た通りです。

ちなみにですが、202210月から20233月末まで放送されていたNHK連続朝ドラ「舞いあがれ!」の中でも「一人で抱え込む人間」が描写されているシーンがあったので紹介します。

 

・主人公の兄(以下Aとする)は20代半ばから才能を活かしてヘッジファンドで投資家として働くようになり、更には20代後半という若さでリーマンショックを予測したことで世間の注目を浴びるようになる

 

・しかしAはその後に損失を重ねてしまい、その合計額が約20億円に膨れ上がってしまう

 

・様子がおかしいことを家族にも悟られるが、プライドの高さゆえ誰にも打ち明けようとしない

 

・巨額の損失の埋め合わせについて同僚に心配されるが、「大丈夫だ」「問題ない」等と一人で抱え込み、こっそりとインサイダー取引に手を染めた結果ニュース沙汰、裁判沙汰になってしまった

 

うろ覚えの部分もありますが、ざっくりと上記のような流れです。

ポイントは後半の「家族に打ち明けない」「同僚に相談しない」ところだと私は思っています。

 

おそらくですが投資の才能やリーマンショックを予測したセンスがAを自信過剰に陥らせ、「自分なら大丈夫」、「全て自分で解決できる」という考えに支配されたのだろうと思います。

そのプライドが家族や同僚の心配に聞く耳を持たせず、一人で抱え込んだ結果インサイダー取引に走ったのだと考えられます。

 

そしてニュース沙汰になった際、当然ながらAの同僚は電話越しに

「どうしてそんなことをした!」

「俺がどういう気持ちで会社を大きくしてきたか分かってるのか!」

等とAに詰め寄るシーンがあり、今後の対応に追われる同僚の姿が想像できます。

 

同僚にとってこの一連の事態はまさに「寝耳に水」であり、会社の業務効率の悪化やAに対する信用の失墜などマイナスな影響しか与えていないことが分かります。

 

もしAが損失の埋め合わせについて誰かに相談し、協力して対処できていたとすればこのような大事にまで発展しなかったのではと考えずにはいられません。

 

あくまでこれはドラマ(エンターテインメント)の中での話ではありますが、自分で問題を抱え込むAの姿が会計の仕事を抱え込んでいた過去の自分の姿にあまりにも似ていたため紹介しました。

登場人物の心情や人間関係を理解したいのであれば「舞いあがれ!」全話見て頂きたいところです。しかし、気になるけれども時間がない方は86、87話だけでも見てみてください。


 

 

③「寝耳に水」状態を回避するために―コミュニケーションの重要性―

最後になりますが、一人で抱え込むことはデメリットしかなく、不祥事が発覚した場合チームのメンバーにとっては「寝耳に水」状態になるのはいかなる仕事でも当てはまります。

 

特に消火、救急、救助業務ではチームで災害対応にあたるため、一人で抱え込んだ結果チームが「寝耳に水」状態になれば要救助者の命や仲間の命までも危険に晒すリスクにつながります。

 

安全をしっかりと担保した状態でいい仕事をするためにも、仲間と連携することやコミュニケーションが重要であることが分かります。

 

コミュニケーションの重要性について解説した過去記事を載せておきます。是非参考にどうぞ↓↓

コミュニケーションの重要性について、あなたが経験したことを踏まえて述べなさい


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