平成22年さいたま市消防 「緊急性が認められない119番通報についてあなたの考える解決策を述べよ」

2022年5月16日月曜日

 

緊急走行する永田町特別救助隊(東京消防庁 麴町消防署 永田町出張所)


平成22年さいたま市消防

「緊急性が認められない119番通報についてあなたの考える解決策を述べよ」

の解答、解説記事になります。まずはヒント編を読み、論文を書く練習をしてみてください。

 

<ヒント編>

➀論題分析・構成

今回の論題はシンプルで

「緊急性のない通報をどのように減少させていくか」

ということです。

ただ、考察しなければならないのは

「なぜ緊急性のない通報が問題なのか」

ということです。解決策を真っ先に述べることは重要ですが、緊急性のない通報のどのような点が問題になるのかを合わせて述べていかないと説得力に欠ける論文になってしまいます。

また、緊急性のない通報が現在どれほどあるのかを定義するためにも自分が就職を希望する消防本部のデータを把握しておく必要があります。

ただ、どこの消防本部でもこのようなデータは確定するまでに12年かかります。そのため最新のデータといっても公表されているものは2021年か2020年のもの(※2022年現在)なのでなるべく最新の確定データを把握するようにしたいところです。

 

②方策とは・・・

以上を踏まえて解決策を述べていくわけですが、その解決策は現実的なものである必要があります。

いかなる論題でも念頭に置かなければならないのは

「自分が消防職員だったらどのように考えるか」

です。

行政課題に対する解決策を考えるにあたってそれは


実行可能なものなのか

それに投資する予算や人員は確保できるものなのか

実行するにあたってどれほどの時間がかかるのか


それらを考慮した上で自分の考える一番現実的な解決策を述べていく必要があります。

 

③練習

ウォーミングアップが終わったところで実際に書く練習をしてみます。構成は上で見た通りです。それぞれの項目ごとに50~100字程度で解答してみてください。

「緊急性のない通報を減らすための解決策(簡単に)」50

「現時点での統計データから緊急性が無いと考えられる通報件数を定義する」100

「なぜ緊急性のない通報が問題なのか(解決しなければならない理由)」50

解決策(具体的に)」100

 

<解答編>

(※さいたま市消防の出題ですが、東京消防庁の出題として解答しています。)

緊急性のない119番通報を減少させていくためには、救急車要請の通報の内訳を改善していくことが重要であると考える。2020年度における約87万件の通報内容について見てみるとその約8割にあたる72万件が救急要請の通報であり、その中でも約半数が入院の必要のない軽症の患者対応のためのものであった。通報を受理する司令員や現場で命を救う救急隊員や消防隊員、また活動に使用される車両には限りがある。このことから緊急性のないむやみな通報が本当に助けを必要とする人の妨げになりうることが十分に考えられる。

 


上記を踏まえた上で、緊急性のない救急車要請の通報を減少させていく方策として#7119の周知と訓練をあげたい。現在、防災訓練やイベントなどを通じて広報を行っているところではあると思われる。しかしそれは知ってもらうだけでなく、実際に使えるようになってもらうことが重要である。傷病者になるのは自分か他人かもわからず、症状も状況も様々なケースが想定される。そのような救命のシーンにおいて症状の判断に迷ったら迷わず#7119を押せるような訓練を取り入れてはどうかと考えるのである。例えばまちかど防災訓練の機会を使い、自宅や駅、職場など様々な状況や症状を想定して#7119を使ったやり取りの練習を行うのである。そして軽症だった場合と救急車を呼ばなければならない場合にどのような流れになるのか訓練を通じて体感してもらうのである。そして1人でも多くの都民が#7119をスムーズに利用できるようになれば、緊急性の低い軽症者対応の通報が減少する。その結果として緊急性のある中等症や重傷者のもとに重点的に救急隊が駆け付けられる体制が実現可能になると考えている。

 


以上、緊急性が認められない通報を減少させていくことについて見てきたが、危惧しなければならないのは都民が119番通報について萎縮してしまうことである。むやみな通報を行わないよう広報することは重要ではあるが、119番通報をためらった結果として要救助者の生命に危険が生じてしまっては本末転倒である。このようなことを避けるためには都民に上記にあるように普段からの訓練で#7119を含めて通報に慣れて頂くこと、そして数字を示したデータを用いて119番通報の内訳の実態を知って頂くことが重要だと考える。万が一の際には119番通報するか#7119に問い合わせるか決断しなければならない場合があることを自分事として捉えてもらうのである。これが緊急性のない通報を減少させていくことにつながっていくと私は考えている。

 

 

 

<解説編>

➀構成

構成としては

1段落:「解決策と緊急性のない通報数の定義」

(救急の通報について内訳を改善・緊急性のない通報が本当に助けを必要とする人の妨げになりうる)


2段落:「解決策(具体的)」

#7119を知ってもらうだけでなく実際に使えるようになってもらうよう訓練)


3段落:「通報に対して萎縮しないよう配慮・まとめ」

 

の構成になっています。

 

 

②東京消防庁の2020年度通報受信件数

ヒント編でも述べましたが、どこの消防本部でも災害に関する統計データが確定するには12年かかります。現時点で公開されている直近のデータはあくまで「速報値」の注意書きが含まれており、今後変化していく可能性があるためデータとしてはあまり使うべきものではありません。

今回使用したデータは東京消防庁の2020年度の通報受信件数とその内訳です。このデータは全て東京消防庁公式HPに掲示されているものであり、皆さんにもぜひ検索して自分の目で確かめて頂きたいと思います。

「東京消防庁 令和2年 通報件数」

で検索してみてください。

 

③解決策の提案

本文では#7119の広報と訓練を案として上げました。これを上げた理由は救急通報が多いことの他に一番効率的だと考えたからです。

例えば

「通報の有料化」

を解決策として上げた場合を考えてみたいと思います。

確かに有料とされれば安易に通報する人は減るかもしれません。しかし実際に料金を回収する際に

誰がどのような根拠(法律)の下、

どのような形態(現金回収か振込か等)で実行するのか

様々なことを事前に議論し決定しなければなりません。


また、

法律を制定するにあたっては国会で国会議員たちが議論しなければならない

こともあり実現までに様々な人や組織が関わり、途方もない時間が費やされてしまいます。

 

そうなるよりかは私は

「救急通報における軽症者対応」の割合にピンポイントで注目

し、この部分に特化して通報数を抑えていくよう対策していく必要があると考えたため#7119の広報と訓練を案として上げたということです。

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