【令和3年度川崎市消防】「女性消防吏員が増えることにより期待できる効果と課題とその解決策について」

2022年4月25日月曜日

 

救助工作車 中原救助(川崎市消防局 中原消防署)


令和3年度川崎市消防

「平成27年に “女性の職業生活における活躍の推進に関する法律” が施行されました。これに伴い、全国の消防全体として消防吏員に占める女性消防吏員の比率を令和8年度までに5%に引き上げることを目標にしており、川崎市においても女性比率は上昇傾向にありますが目標の達成は容易ではありません。

そこで、女性消防吏員が増えることにより期待できる効果について述べた上でこの目標の達成にあたり考えられる課題と、課題を解決するために川崎消防が行うべき取り組みについてあなたの考えを述べなさい」


の解答例・解説記事になります。まずはヒント編を読み、自身で論文を書く練習をしてみてください。

 

<ヒント編>

論題分析・構成

やたらと長い論題ですが、要は

「女性消防士が増えることによるメリット・その課題・その解決策」

ということです。

よって構成もその順序で記述できれば問題ありません。

 

②女性消防吏員が増えることの課題とは

論題にある「目標の達成にあたり考えられる課題(女性消防吏員が増えることの課題)」についてですが、記述するにあたっては差別表現にならないよう注意する必要があります。

例えば


出産休暇取得により、人員確保に支障が出る


結婚にともなう早期退職で後進への技術やノウハウの継承に支障が出る


等々です。

一言で言うならば

女性観を固定視するような表現

ということになります。

このような性別によって人を固定視する表現は現代の多様な人材による多様な働き方の実現にとって最もNGなものであり、答え方(記述の仕方)によっては面接前に自身の評価を下げるリスクがあるので注意です。


ただ、「差別」は論外ですが

「男女の区別」

は必要です。

その「男女の区別」に従って女性職員を男性と同等に一人の消防職員として働かせていくにあたってどのようなことが課題になるか考えましょう。

 

少しヒントを与えるならば、「男女の区別」が必要になるシーンは交代制勤務で生じることが考えられます。

 

③練習

ウォーミングアップが終わったところで実際に書く練習をしてみます。構成はで見た通りに、下記の項目について100字程度で記述してみてください。

 

「女性消防士が増えることのメリット」100


「女性消防士が増えることに伴って考えられる課題」100


「その課題の解決について」100

 

<解答例>

※多くの方の参考になるよう川崎消防としての取り組みには言及していません※

女性消防吏員が増えることによって期待できる効果として女性患者への救急サービスの向上があげられる。救急隊員としては性別関係なく傷病者を救いたい立場ではあるものの、女性患者にとっては受傷した個所や体調不良の詳細など男性隊員へは伝えづらいケースもあることが想定できる。そのような場合に女性患者にためらいなく救急車を要請してもらうために有効なものが女性救急隊員の存在であると私は考える。


私は駅員のアルバイトに携わっていた際にホーム上で女性の急病人に遭遇したことがある。その方に声掛けを行ったところ女性職員に対応してほしいとだけ言われたため、女性社員に引き継いだ。傷病の詳細は分からなかったが、おそらく女性としては男性に伝えづらい内容であったからこそ女性社員への引継ぎを望んだのではないかと考えられる。このように女性職員の存在が必要な場面は消防でも同様であり、女性消防士を増やしていくことは女性患者や要救助者の安心に貢献できる面でメリットになる。


しかし、その一方で課題となるのが2つあげられる。すなわち男性隊員との体力の差と職場でのプライバシーの確保である。仮に女性職員がポンプ隊へ配属された場合、防火衣や空気呼吸器等の装備も男性隊員と同じ物を着用し、男性と同じように消火活動を行わなければならない。そのときに体力のハンデが活動を鈍らせてしまうのは逆に要救助者を危険に晒してしまうことにもなる。その解決策としては女性職員自身で技術や体力を向上させていくことはもちろんだが、上司がその女性職員がどこまでできるのか常に限界を把握し続けることも重要だと考える。そのためには日ごろの訓練を通じ、女性職員の活動限界が部隊全体のスムーズな活動にどのように影響してくるのか実際に確認していくべきである。このように女性職員の限界と部隊全体の活動とのすり合わせを地道に実施していくことが解決策になると私は考える。


次にプライバシーの確保についての解決策であるが、消防本部によっては女性専用の鍵付き個室を設けているところもある。このように鍵付き個室まではいかないとしても女性職員のプライバシーを保護していくにあたり考慮しなければならないのが消防署内のキャパシティーである。国内の消防全体で女性比率を高める目標の下、採用数を増やすことは望ましいことではある。しかし女性職員全員が予防など日勤に配属できるとは限らない。救急隊をはじめとした交代制勤務に配属させる場合、その消防署あるいは出張所でどれほど女性専用のスペースを確保できるのか入念な検討を実施するべきであると考える。または現在の事務スペースや訓練場所を縮小してでも設置しようとするのであればそこに勤務している男性職員に理解を求めていくことも重要である。このようにプライバシーの確保は体力面での課題に見たように話し合いや努力などソフト面での解決は困難であり、前提となるのが消防署や出張所のスペース確保といったハード面での対策になる。このことから私は女性職員を増やすにあたっては国全体の目標に従って増やしていくのではなく、まず現段階で消防本部としてどれほどの女性職員を抱えることができるのか事前に検討していくことが重要だと私は考える。そしてハード面が確保できたその上で逐次女性比率を増やしていくことで目標を達成していくべきである。

 

 

<解説編>

構成

構成としては

12段落:女性消防士が増えることのメリットとその理由(女性患者にとって安心して救急要請ができる。駅員アルバイトの経験。)

 

3段落:体力面での課題

(女性職員の努力、活動の限界を常に上司が把握、部隊のスムーズな活動とのすり合わせ)

 

4段落:プライバシーの確保

(前提として消防署や出張所のキャパシティーを把握、受け入れられる女性職員の数を決める)

 

 

②体力面とプライバシーで「区別」

ヒント編で述べた通り、課題を述べる際は差別的な表現はNGですが区別に伴うものであれば問題ありません。

本文では体力面とプライバシー面の2つで課題を述べています。

この2つが差別的表現でない理由はスポーツの試合や公共の場でのトイレや更衣室が男女別になっていることからも明らかだからです。

 

一般的にスポーツにおいては男女別で試合が行われるケースがほとんどです。

女性は男性と比べて身長や体重、筋肉量が少なく、競技を実施していくにあたって多くのシーンで男性との間に不公平が生じることを防ぐための区別だと考えています。

そして日本に限らず全世界でもスポーツが男女別になっていることが今回の解答において体力が差別にならないと考えた理由になります。

 

しかし、消防はスポーツではないため24時間勤務の場合女性職員も男性職員と同様の現場で同様の装備を着用して活動する必要があります。

ただ、体力面では覆しようがない面があることは事実です。

それを踏まえた対策として上司が女性職員の限界を常に把握する必要があり、スムーズな部隊活動とのすり合わせをおこなうべきだということを述べました。

 

 

③女性消防士を増やすために

本文では触れませんでしたが、女性消防士を増やすには消防の仕事には予防や査察、防災指導、救命講習指導など災害対応以外の仕事もあるというPRも有効だと考えています。

 

実際の災害現場や傷病者の対応に携わった経験が活きるキャリアもあるというPRを行えば消火や救急業務に対してためらいを感じる女性も減り、消防の仕事に興味を持つ可能性もあるのではないでしょうか。

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