下の資料から傾向を読み取り、行政機関が発信する情報を都民に広く周知するための効果的な方法を考え、具体的に述べなさい。

2021年4月26日月曜日

 


下の資料から傾向を読み取り、行政機関が発信する情報を都民に広く周知するための効果的な方法を考え、具体的に述べなさい。(令和2年1回目)

 

の解答、解説記事になります。まずはヒント編を読み、論文を書く練習をしてみましょう。

 

<ヒント編>

1:まず今回の論題で中止すべきことは「インターネットを通じて都民に情報を周知するにはどうすべきか」という問いではないことです・そのようなことは一切問題文に書かれていません。

あくまで「資料の傾向を読み取ったうえで情報周知する対策についてどう考えるか」というスタンスを取る必要があります。

そこで大まかな構成としては

1段落:資料から読み取れる傾向

2段落:傾向を読み取ったうえでの都民への情報周知について

3段落:まとめ等

 とするのがよいでしょう。


2:資料の注目点(必ず2つの資料に注目すること)

次に資料の注目点ですが過去の問題よりかは単純なものなのでそこまで身構える必要はありません。

見ての通り世代ごとに使用率、使用目的ともに大まかな特徴があるのでそれを1段落目で指摘してしまえば問題ありません。ちなみにですが傾向を上げる際1つずつだけだと分析がしづらくなる可能性があるので少なくとも2つずつは上げておきたいところです。何故1つの資料につき2つずつかというと、当ブログを熟読していればもうおわかりですね。そう「比較」をするためです。


比較を通じて全体の流れが認識でき、対策を論じ始めるまでの土台が固まるというわけです。

それぞれの資料で世代や使用目的について細かく数字が出ていますが、いかにして2つの資料全体を俯瞰して大まかな傾向をつかめるかが腕の見せ所です。

 

3:練習

ウォーミングアップが終わったところで実際に書く練習をしていきます。構成は上に述べた通りで問題ありません。繰り返しになりますが問題文には「インターネットを使用して都民に情報を周知するにはどうすべきか」とは一言も書いていません。よって世代ごとの大まかな特徴を捉えたらそれに合わせた柔軟な情報周知策を述べていく必要があります。

大ヒントになってしまいますが、12歳までの子供世代と65歳以上の高齢者世代はインターネット使用率があまり高くありません。

また、目的についても子供世代にあっては娯楽目的で使っていることが見て取れます。人にもよるでしょうが、このような子供が自主的に行政機関の発する情報を収集するでしょうか?

このように考えるとインターネットが得意な世代にはインターネットを使って周知すればよく、その他の世代には別の方法を以って情報を周知するのが効率的な方法となります。長くなってしまいましたが以下の構成で実際に書く練習をしてみましょう。

 

1段落:資料から読み取れる傾向:150字程度

   (1つの資料につき2つずつ。傾向同士を比較させ対策を論じるまでの土台を作る。)

2段落:傾向を踏まえた対策:200字程度

  傾向に合わせてインターネットを使った対策と使わないで行う対策を述べる。)


<解答例>

 まず利用率の資料から読み取れる傾向は2つある。1つ目は13~59歳の9割以上が利用していること、2つ目は60歳以降の世代で利用率が年齢を重ねるごとに極端に減っていることである。次に使用目的別の資料においても2つある。1つ目は6~19歳までは娯楽目的に、2つ目は20~59歳まではメールの送受信や天気予報、ニュースの確認等おそらく仕事目的に使っていることが予想できることだ。以上の傾向から世代ごとに利用率や使用目的にそれぞれ異なる特徴があるため、それに合った方法で情報を都民に周知していくのが望ましいと考える。

 

 まず619歳と70歳以上の世代についてはインターネットを使った情報周知は効率が悪い。理由としては先述したように子供たちは娯楽目的で、高齢者はそもそもインターネットをあまり使っていないことがグラフから読み取れるからだ。娯楽目的でインターネットを使う子供がピンポイントで行政機関のページを訪れるとは考えにくく、また高齢者向けにインターネット上で情報を流しても届かないかもしれないのである。そこで私は子供達や高齢者用の情報媒体として広報紙の活用を上げたい。例えば東京消防庁の広報誌としては「広報とうきょう消防」が発行されているが、こちらにあえて彼ら向けに特化したデザインのものを用意するのである。具体的にはアプリを開くQRコードやユーチューブチャンネル、東京消防庁ホームページの案内等インターネットが絡む要素を極力減らし、その代わりに文字を大きくしたりイラストを多めに配したシンプルな紙面を作るのである。さらに、長期間にわたって自発的に読んでもらえるよう例えば巻末に次号の予告を入れたり、一つの特集を何号かに分割して連載していく手段もよいだろう。

 

次に4069歳の世代に対してはニュースサイトと提携することを上げたい。具体的にはまず行政側が発信したい情報を含んだ記事をあらかじめ作成しておく。そしてなるべく都民の目に留まるようサイトの東京都内ニュースに分類されている記事に関連情報として載せてもらうのである。例えば災害に関するニュースであれば防火防災に関する記事を関連して紹介してもらう要領である。メインニュースの関連にこだわる理由としては、どの世代でも閲覧しているコンテンツの中にいきなり無関係の情報が入っていても即座にスキップしてしまう傾向があるからだ。これを踏まえると、メインニュースとりわけ東京都内のニュース記事に関連する情報として紹介し、興味を持たせた上で閲覧へと誘導していくことが重要になってくると考える。

 

以上、行政が発信する情報を周知する対策を上げたが、注意したいのはこれらの対策は今の時代にのみ有効なものであることだ。今後少子高齢化が進行し、インターネットの使用に抵抗がない世代が高齢者になればグラフの形もまた変わることが十分予想できる。行政側としては傾向を注視し、今後も時代に合った情報発信方法を検討し続けていかなければならないと考える。

 

<解説編>

1:構成

1段落目:資料から読み取れる傾向

(利用率の資料からは高齢世代とそうでない世代によって極端な差があること。使用目的の資料からは世代によって娯楽目的に使ったり仕事用で使うといった差がみられる)

 

2段落目:傾向をつかんだ上で、インターネット以外の媒体も   使った情報周知策

(子供世代や高齢者世代にはわかりやすい広報紙で、中間世代にはニュースサイトの東京都ニュースに関連情報として記事を紹介してもらう。)

 

3段落目:まとめ

グラフで見た傾向は今の時代のみにみられること。時代が変われば傾向もまた変化しうるため注視していく必要性あり。)

 

2:問題文と資料の間に生じる矛盾―東消の雑な問題作成―

勘のいい方は気付いているかもしれません。

この資料の出どころは総務省による統計調査であり調査対象となった方は東京都に限らず全国にわたっているはずです。その全国データを用いて作られた今回の資料を参考に掲げ、東京都民に情報を周知させる策を考えさせるのは矛盾しているとしかいえません。


つまり、東京都民限定でこのような調査を実施した際にはまた違ったデータが得られる可能性が十分に考えられ、論文もまた違った内容になる可能性があるということです。

本来であればこのような問題を出す際は東京都限定の調査によるグラフを使うべきであって、国の機関が全国を対象にして作成したグラフは使うべきではないのです。

 とはいっても文句を言っていても始まらないので、本問の資料を東京都の資料と仮定して解答していかなければなりません。

東京消防庁には精査された丁寧な問題作りをお願いしたいところです。

 

3:情報を発信するからには都民の目に留まり、認知してもらうよう策を打つ

ヒント編でも述べましたが、資料からは世代ごとにネットの利用率や使用目的もばらつきがあることがわかります。いくらネットが発達したといってもただ情報を発信すれば都民に自然と届くとは言えない状況であることは明白です。


仮にインターネット上で情報を発信したとしても、本文にあるように自分の興味に関係ない内容であればすぐさまスキップされてしまうのが関の山です。わかりやすく言うとユーチューブの動画中に現れる広告がいい例です。あの広告が流れても最後まで見ずにスキップボタンを押している方がほとんどなはずです(※一応ユーザーの過去の検索履歴をAIが学習し、その検索に合いそうな広告が選ばれている仕組みなのですが・・・)。もちろん私も同様に最後まで広告を見ることはめったにありません。スキップします。

 

つまり行政機関側がただ情報を発信したとしても、方法が適切でなければそれが無駄に終わってしまう危険が十分に考えられるわけです。そこで私が考えたのがニュースサイトのメイン記事のページにそのニュースに関連する行政情報を含んだ記事を紹介してもらう方法です。

ほとんどのニュースサイトには地域ニュースのカテゴリーがあり、特に朝日新聞や日経新聞など規模の大きいサイトでは「東京」カテゴリーが設けられています。県境や国境のないネット空間において問題文に指定されているように、都民だけに情報を周知するにあたってはニュースサイト内「東京」カテゴリーで発信することが一番都民の目に留まると私は考えたということです。

 

最後に、子供世代や高齢者向けに広報紙「とうきょう消防」のデザイン案を述べた件について解説します(※「とうきょう消防」を知らない方は今すぐ検索です!)。

 

ネットを使えない高齢者や娯楽目的でのみ使う小学生に対して行政機関がネット上で情報を発信してもほとんど意味が無いことは本文で考察した通りです。インターネットが使えないとなると、残された情報媒体はやはり紙です。試しに「とうきょう消防」を実際に見てみると字が細かくコンテンツがたくさんあり、またアプリのQRコードや東消HPへの誘導など確かに充実しています。

しかし、私としてはより子供や高齢者に自発的に手に取って読んでもらうことまでを想定したいです。そこで本文で述べたようにインターネット要素を減らし字を大きくしたり、イラストを多めに配置したり、連載欄や予告を入れることで一回限りでなく長期間にわたって読んでもらいやすくする工夫を提案したというわけです。

コメント

0 件のコメント :

コメントを投稿