【小論文の書き方講座】第2回 論題を読み解く ― 「具体的理由と共に」を分解する

2026年10月25日日曜日


短い論題ほど、読み落としが起きる

就職試験の論題は、一文か二文という短いものが大半です。短いからこそ、読み落としや読み違いが起こります。「具体的理由と共に」と書かれているのに一般論で終わる、「あなたの考え」を問われているのに世間の意見を並べる、といった失敗です。これらは書く力の問題ではなく、読む段階の問題です。第2回では、論題を正確に分解する方法を身につけます。



論題の定型を分解する

次の論題を例に考えます。

〜について、具体的理由と共にあなたの考えを述べなさい。

この一文には、答案に必要な要素が3つ含まれています。

  1. テーマ(〜について): 何を論じるのか
  2. 考え(あなたの考えを): 自分の立場・意見を明確に述べる
  3. 具体的理由(具体的理由と共に): なぜそう考えるのか、それを裏づける具体例は何か

3つのどれが欠けても、論題への応答としては不十分です。特に「あなたの考え」とあるときは、一般論や世間の意見ではなく、自分の立場を明示することが求められています。


「具体的理由」とは何か

「具体的理由」は、理由と具体の二階建てでできています。

構成内容例
理由(抽象)なぜそう考えるのかという筋道仕事は他者との信頼の上に成り立つから
具体(事実・経験)その理由を裏づける出来事や事例アルバイト先で、顧客の話を聞いてから提案したところ、再度の来店につながった

理由だけだと一般論に聞こえ、具体だけだと感想に聞こえます。両方がそろってはじめて「具体的理由」になります。

次の例を比べてみましょう。

  • 不十分: 私は、挨拶が大切だと考える。なぜなら、挨拶は大切だからだ。(理由が主張の言い換えになっている)
  • 十分: 私は、挨拶が大切だと考える。なぜなら、挨拶は信頼関係の最初の一歩になるからだ。たとえば、ゼミで毎回自分から挨拶を続けた結果、他学部の学生にも気軽に相談してもらえるようになった。

就職試験の論題の4タイプ

就職試験の小論文は、大きく次の4タイプに分けられます。志望先によって論題は異なりますが、基本の考え方は共通です。

タイプ論題の例考え方の軸
価値観型働くうえで大切なことについて自分の価値観を、経験で裏づける
社会・時事型人手不足、生成AIと仕事、少子高齢化などについて現状の認識、自分の考え、具体例の順に述べる
自己経験型学生時代に力を入れたことについて経験、学び、仕事への生かし方の順に述べる
企業・職種型志望先や職種に期待されることについて志望先への理解と、自分がどう貢献するかを結びつける

どのタイプでも、答案の骨格は「考え・理由・具体」です。違うのは、具体をどこから持ってくるかです。価値観型と自己経験型は自分の経験、社会・時事型は社会の事例や身近な場面、企業・職種型は志望先についての調べた事実が中心になります。


条件の拾い出しと論点の絞り込み

論題を読んだら、条件に線を引きます。

  • 字数(「800字以内」「600字程度」)
  • 内容の指定(「具体的理由と共に」「具体例を挙げて」「あなたの考え」)
  • 立場の指定(「賛成か反対か」「一つ挙げ」)

次に、論点を絞ります。「働くうえで大切なこと」は非常に広いテーマです。「コミュニケーション、責任感、向上心、協調性…」と並べると、どれも浅くなります。一つに絞って深く掘り下げるほうが、説得力が出ます。


練習問題2

問1 次の2つの論題を分解し、(1)テーマ、(2)求められている要素、(3)絞り込みの方針を書きなさい。

論題A:「チームで働くうえで大切なことについて、具体的理由と共にあなたの考えを述べなさい。(800字以内)」

論題B:「近年の人手不足について、あなたの考えを具体的な理由と共に述べなさい。(800字以内)」

問2 次の文章を、「具体的理由」として成り立つように、理由と具体の二階建てに書き直しなさい。

私は、責任感が大切だと考える。責任感がないと、仕事はうまくいかないからだ。

解答例と解説

問1の例

論題A: (1)テーマは、チームで働くうえで大切なこと。(2)考え、理由、具体の3つ。字数は800字以内。(3)「報告・連絡・相談」「役割の自覚」などから、一つに絞る。

論題B: (1)テーマは、人手不足。(2)人手不足をどう捉えるか(原因、影響、対策のどこに焦点を置くか)についての自分の考えと、具体的な理由。(3)「人手不足は、働き手を増やすよりも、仕事の進め方の見直しで対応すべきだ」のように、立場を一文で決める。

論題Bのような社会・時事型では、広いテーマを「何について」「どの立場で」と絞ることが特に重要です。

問2の例

私は、責任感が大切だと考える。なぜなら、仕事は自分の担当が果たされなければ、後工程の人にまで影響が及ぶからだ。たとえば、私はサークルの会計係を務めた際、報告の期限を守れず、他のメンバーの活動予定を遅らせてしまった。この経験から、自分の役割を果たすことが、周囲への信頼につながると実感した。

元の文は、理由が主張を言い換えただけでした。直した文では、「なぜ責任感が大切か」を筋道で示し、経験で裏づけています。


まとめ
  • 「〜について、具体的理由と共にあなたの考えを」=テーマ・考え・具体的理由の3要素
  • 具体的理由は、理由(抽象)と具体(経験・事例)の二階建て
  • 論点は広げず、一つに絞って深く掘り下げる

次回は、説得力の核である「具体的理由のつくり方」を扱います。

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