【小論文の書き方講座】第2回 論題を読み解く ― 「具体的理由と共に」を分解する
就職試験の論題は、一文か二文という短いものが大半です。短いからこそ、読み落としや読み違いが起こります。「具体的理由と共に」と書かれているのに一般論で終わる、「あなたの考え」を問われているのに世間の意見を並べる、といった失敗です。これらは書く力の問題ではなく、読む段階の問題です。第2回では、論題を正確に分解する方法を身につけます。
次の論題を例に考えます。
〜について、具体的理由と共にあなたの考えを述べなさい。
この一文には、答案に必要な要素が3つ含まれています。
- テーマ(〜について): 何を論じるのか
- 考え(あなたの考えを): 自分の立場・意見を明確に述べる
- 具体的理由(具体的理由と共に): なぜそう考えるのか、それを裏づける具体例は何か
3つのどれが欠けても、論題への応答としては不十分です。特に「あなたの考え」とあるときは、一般論や世間の意見ではなく、自分の立場を明示することが求められています。
「具体的理由」は、理由と具体の二階建てでできています。
| 構成 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 理由(抽象) | なぜそう考えるのかという筋道 | 仕事は他者との信頼の上に成り立つから |
| 具体(事実・経験) | その理由を裏づける出来事や事例 | アルバイト先で、顧客の話を聞いてから提案したところ、再度の来店につながった |
理由だけだと一般論に聞こえ、具体だけだと感想に聞こえます。両方がそろってはじめて「具体的理由」になります。
次の例を比べてみましょう。
- 不十分: 私は、挨拶が大切だと考える。なぜなら、挨拶は大切だからだ。(理由が主張の言い換えになっている)
- 十分: 私は、挨拶が大切だと考える。なぜなら、挨拶は信頼関係の最初の一歩になるからだ。たとえば、ゼミで毎回自分から挨拶を続けた結果、他学部の学生にも気軽に相談してもらえるようになった。
就職試験の小論文は、大きく次の4タイプに分けられます。志望先によって論題は異なりますが、基本の考え方は共通です。
| タイプ | 論題の例 | 考え方の軸 |
|---|---|---|
| 価値観型 | 働くうえで大切なことについて | 自分の価値観を、経験で裏づける |
| 社会・時事型 | 人手不足、生成AIと仕事、少子高齢化などについて | 現状の認識、自分の考え、具体例の順に述べる |
| 自己経験型 | 学生時代に力を入れたことについて | 経験、学び、仕事への生かし方の順に述べる |
| 企業・職種型 | 志望先や職種に期待されることについて | 志望先への理解と、自分がどう貢献するかを結びつける |
どのタイプでも、答案の骨格は「考え・理由・具体」です。違うのは、具体をどこから持ってくるかです。価値観型と自己経験型は自分の経験、社会・時事型は社会の事例や身近な場面、企業・職種型は志望先についての調べた事実が中心になります。
論題を読んだら、条件に線を引きます。
- 字数(「800字以内」「600字程度」)
- 内容の指定(「具体的理由と共に」「具体例を挙げて」「あなたの考え」)
- 立場の指定(「賛成か反対か」「一つ挙げ」)
次に、論点を絞ります。「働くうえで大切なこと」は非常に広いテーマです。「コミュニケーション、責任感、向上心、協調性…」と並べると、どれも浅くなります。一つに絞って深く掘り下げるほうが、説得力が出ます。
問1 次の2つの論題を分解し、(1)テーマ、(2)求められている要素、(3)絞り込みの方針を書きなさい。
論題A:「チームで働くうえで大切なことについて、具体的理由と共にあなたの考えを述べなさい。(800字以内)」
論題B:「近年の人手不足について、あなたの考えを具体的な理由と共に述べなさい。(800字以内)」
問2 次の文章を、「具体的理由」として成り立つように、理由と具体の二階建てに書き直しなさい。
私は、責任感が大切だと考える。責任感がないと、仕事はうまくいかないからだ。
解答例と解説
問1の例
論題A: (1)テーマは、チームで働くうえで大切なこと。(2)考え、理由、具体の3つ。字数は800字以内。(3)「報告・連絡・相談」「役割の自覚」などから、一つに絞る。
論題B: (1)テーマは、人手不足。(2)人手不足をどう捉えるか(原因、影響、対策のどこに焦点を置くか)についての自分の考えと、具体的な理由。(3)「人手不足は、働き手を増やすよりも、仕事の進め方の見直しで対応すべきだ」のように、立場を一文で決める。
論題Bのような社会・時事型では、広いテーマを「何について」「どの立場で」と絞ることが特に重要です。
問2の例
私は、責任感が大切だと考える。なぜなら、仕事は自分の担当が果たされなければ、後工程の人にまで影響が及ぶからだ。たとえば、私はサークルの会計係を務めた際、報告の期限を守れず、他のメンバーの活動予定を遅らせてしまった。この経験から、自分の役割を果たすことが、周囲への信頼につながると実感した。
元の文は、理由が主張を言い換えただけでした。直した文では、「なぜ責任感が大切か」を筋道で示し、経験で裏づけています。
- 「〜について、具体的理由と共にあなたの考えを」=テーマ・考え・具体的理由の3要素
- 具体的理由は、理由(抽象)と具体(経験・事例)の二階建て
- 論点は広げず、一つに絞って深く掘り下げる
次回は、説得力の核である「具体的理由のつくり方」を扱います。

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