この講座は、就職試験で出題される小論文、とりわけ「〜について、具体的理由と共にあなたの考えを述べなさい」という形の論題に対応できる力を、全5回で身につけるための教材です。基本から始めて、最終回では本番と同じ形式で答案を仕上げます。各回に実戦形式の練習問題を用意しているので、読むだけで終わらず、必ず自分の手で書いてみてください。


全5回のロードマップ

回テーマ身につくこと
第1回就職試験の小論文とは何か採点者の視点と基本の型
第2回論題を読み解く「具体的理由と共に」の分解、論題のタイプ
第3回具体的理由のつくり方理由の深掘り、経験を使った具体例の書き方
第4回文章表現と推敲就職試験で減点されない書き方、見直しの手順
第5回実戦演習本番形式で書き、自己採点する

この教材の使い方

  • 練習問題は、解答例を見る前に必ず自分で書く
  • 解答例の経験談は架空のものなので、自分の経験に置き換えて練習する
  • 字数、制限時間、手書きかどうかは志望先によって異なるため、募集要項や過去の出題で確認する

はじめに

就職試験では、筆記試験や面接と並んで、小論文を課す場合があります。企業や団体が小論文を課す目的は、文章のうまさを見ることだけではありません。限られた時間の中で、与えられたテーマについて自分の考えを筋道立てて伝えられるか、そしてどのような価値観で仕事に向き合う人なのかを知ることにあります。第1回では、就職試験の小論文とは何かという土台を固めます。

小論文の定義

小論文とは、与えられた問いに対して、自分の主張を、根拠を示しながら、筋道立てて述べる文章です。ポイントは次の3つです。

  1. 問いがある: 論題に答える文章である
  2. 主張がある: 自分の考えを明確にする
  3. 根拠がある: 読み手が納得できる理由と具体例を示す

このうち一つでも欠けると、小論文としては不十分です。

作文・感想文・レポートとの違い

種類中心になるもの就職試験で通用しにくい理由
作文・感想文自分の気持ち「頑張ります」「楽しかった」だけでは考えが伝わらない
レポート調べた事実と分析試験会場では調べる時間がない
小論文問いに対する主張と根拠(これが求められている形)

特に注意したいのは、感想を並べただけの文章は小論文と見なされないという点です。「私はこう考える。なぜなら〜だからだ」まで書いて、はじめて論じたことになります。

採点者は何を見ているか

評価基準は企業や団体によって異なりますが、一般的には次の4点が見られます。

  • 論理性: 主張と理由のつながりに飛躍がないか
  • 具体性: 理由を支える経験や事例が示されているか
  • 価値観・人柄: 仕事に向き合う姿勢が伝わるか。誠実さや視野の広さがあるか
  • 基本的な文章力: 誤字脱字がなく、字数と時間を守って完成させているか

就職試験では、答案が「書き手の考え方の見本」として読まれます。同じ主張でも、どんな経験からその考えに至ったのかが書かれていると、人柄が伝わり、印象に残ります。

基本の型:序論・本論・結論

基本は序論・本論・結論の3部構成です。800字の答案なら、序論150字、本論500字、結論150字ほどが目安です。

  • 序論: 論題に対する自分の考え(主張)を、最初の一文で示す
  • 本論: 主張を支える具体的理由を述べる。理由と、それを裏づける具体例(経験や事例)を組にする。必要なら反対意見にも触れる
  • 結論: 主張をあらためて述べ、仕事にどう生かすかを一言添える

型は窮屈なものではなく、読み手が迷子にならないための地図です。まずは型どおりに書けるようにしましょう。

「具体的理由と共に」型の全体像

論題が「働くうえで大切だと思うことについて、具体的理由と共にあなたの考えを述べなさい」だったとします。答案の骨格は次のようになります。

  • 序論(考え): 私は、働くうえで最も大切なのは、相手の立場に立って考えることだと考える。
  • 本論(理由): 理由は、仕事の成果が顧客や同僚に受け入れられてはじめて価値を持つからだ。
  • 本論(具体): たとえば、学習塾のアルバイトで、生徒のつまずきを聞き取ってから教え直したところ、生徒の理解が進んだ。
  • 結論: 以上から、相手の立場に立つことが大切だと考え、仕事でも実践したい。

「考え」「理由」「具体」の3つがそろっていることを確認してください。この3点セットが、この講座全体を通した軸になります。では次に実際に練習問題をやってみましょう。

練習問題1

問1 次の論題について、(1)あなたの考えを一文で書き、(2)その理由を2つ挙げなさい。

論題:「仕事を通じて成長するために大切なことについて、具体的理由と共にあなたの考えを述べなさい。」

問2 次の文章には、就職試験の小論文として足りないものがある。何が足りないかを説明しなさい。

私は人と接することが好きなので、接客の仕事に向いていると思う。お客様に喜んでもらえるように、一生懸命頑張りたい。

解答例と解説

問1の例

(1)考え: 成長するためには、失敗を振り返り、次に生かす姿勢が最も大切だと考える。
(2)理由: ①同じ失敗を繰り返さなくなり、確実に力がつくから。②周囲からの指摘を前向きに受け止められる人は、信頼されて任される仕事が増えるから。

評価のポイントは、考えが一文で言い切られていること、理由が考えに直結していることです。「大切なことはたくさんある」と並べず、一つに絞るのが基本です。

問2の例

足りないのは、具体的理由と根拠です。「人と接することが好き」「頑張りたい」は気持ちの表明にとどまり、なぜ向いているのか、どう頑張るのかが示されていません。また、論題の問いに対する「考え」ではなく、自己PRになっている点も問題です。「接客で大切なのは○○だと考える。なぜなら〜」という形に直すのが第一歩です。

まとめ

  • 小論文は、問いに対して、主張を根拠付きで述べる文章
  • 就職試験では、論理性・具体性・価値観・基本的な文章力が見られる
  • 「考え・理由・具体」の3点セットが答案の骨格

次回は、書き始める前の最重要工程である「論題の読み解き」を扱います。