内容が良くても、表現で損をする

論証が通っていても、文章が読みにくければ評価は下がります。採点者は多くの答案を短時間で読みます。文体が揺れている、一文が長い、誤字がある、といった答案は、内容が良くても「基本的な文章力に不安がある」という印象を与えます。就職試験では、この印象が評価全体に影響します。第4回では、表現の基本と、書いたあとの推敲の手順を学びます。


文体は常体(だ・である)で統一する

特に指示がなければ、「だ・である」調の常体で統一するのが基本です。指定がある場合は、それに従います。また、話し言葉は避けます。

避けたい表現書き換え例
すごく大切だ非常に大切だ
やっぱり〜だやはり〜だ
いろんな人さまざまな人
バイトアルバイト
〜じゃない〜ではない
御社貴社(書き言葉では「貴社」を使う)
〜と思う(連発)〜と考える/〜である

事実は断定し、意見には「考える」を使うと、文章が引き締まります。


一文を短くする

一文は40〜60字程度が読みやすい目安です。長い文は、意味の切れ目で分けます。

  • 修正前: 私は、働くうえでは相手の立場に立つことが大切だと考えており、その理由は、仕事は一人で完結しないからであり、アルバイトでもそう感じた。
  • 修正後: 私は、働くうえで相手の立場に立つことが大切だと考える。理由は、仕事は一人では完結しないからだ。この点は、アルバイトでも実感した。

主語と述語を対応させる

長い文では、主語と述語がずれる「ねじれ」が起こりがちです。

  • 修正前: 私の強みは、粘り強いところを活かして頑張りたい。
  • 修正後: 私の強みは、粘り強さだ。この強みを活かして頑張りたい。

書き終えたら、各文の主語と述語だけを取り出して読み、つながるかを確かめます。


接続語で論理を見せる
関係接続語の例
順接(理由・結果)したがって、そのため
逆接(対立)しかし、だが
添加また、さらに
例示たとえば、具体的には
換言・要約つまり、すなわち
譲歩確かに、もちろん

接続語を入れても論理が通らない場合は、表現ではなく構成に問題があります。接続語は、すでにある論理を見せるためのものです。

段落を意識する

一つの段落には、一つの内容だけを入れます。800字なら3〜4段落が目安です。段落の冒頭に、その段落で述べたいことを一文で示すと、読み手は全体像をつかみやすくなります。


就職試験ならではの注意点
  • 否定的な表現や他者批判を避ける: 他の人や組織を批判して自分の考えを示すのは避ける
  • 決めつけを避ける: 「若者は〜」「会社は〜」のように、大きな主語で断定しない
  • 志望先の事実は、正確なものだけを書く: 不確かな情報は書かない
  • 手書きの場合は、丁寧に書く: 漢字に自信がないときは、確実に書ける別の言葉に言い換える
  • 字数を守る: 指定字数の9割以上が目安。上限は超えない

推敲チェックリスト

書き終えたら、残り5〜10分で次の項目を確認します。

  1. 論題の3要素(テーマ・考え・具体的理由)に答えているか
  2. すべての条件(字数、内容の指定)を満たしているか
  3. 考えは、最初から最後まで一貫しているか
  4. 理由に、具体(経験や事例)が添えられているか
  5. 文体は統一されているか
  6. 誤字脱字、主語と述語のねじれはないか
  7. 否定的な表現や、決めつけはないか
  8. 字数は指定の範囲内か

練習問題4

問1 次の文章を、(1)文体の統一、(2)一文の分割、(3)ねじれの修正の3点に注意して、就職試験の答案にふさわしい表現に書き直しなさい。

私は、働くうえではコミュニケーションが大事だと思っていて、なぜなら、バイトでお客さんとよく話したら、売上が上がったし、すごく楽しかったので、御社でも頑張りたいです。

問2 第1〜3回の練習問題で自分が書いた答案を、チェックリストで見直し、直した点を2つ書きなさい。

解答例と解説

問1の例

私は、働くうえで大切なのはコミュニケーションだと考える。なぜなら、顧客との対話が、仕事の成果に直結するからだ。たとえば、アルバイト先で積極的に顧客に声をかけた結果、商品の提案が受け入れられやすくなり、売上の向上につながった。この経験を、貴社でも生かしたい。

直した点は次のとおりです。

  • 「です・ます」と話し言葉を、常体と書き言葉に統一した(バイト→アルバイト、お客さん→顧客、御社→貴社)
  • 「〜し、〜し」とつなげていた一文を、理由と具体に分けた
  • 「なぜなら」の対応を整え、「楽しかった」という感想を削った

問2について

解答は人によって異なります。見直しでよく見つかるのは、「条件の見落とし」「一文の長さ」「主語と述語のねじれ」の3つです。自分が繰り返しやすい癖を知っておくと、次の答案から意識して防げます。


まとめ
  • 文体は常体で統一し、話し言葉や口語的な言い方を避ける
  • 一文を短くし、主語と述語を対応させる
  • 就職試験では、否定的な表現や決めつけに注意する
  • 書き終えたら、チェックリストで必ず見直す

次回は最終回です。本番と同じ形式の問題で、ここまでの学びを総合して使います。