令和7年大卒 堺市消防局小論文解答例ー最新デジタル技術と消防業務ー

2026年8月2日日曜日
緊急走行するクイックアタッカー 三宿MF1(世田谷消防署 三宿出張所)


令和7年度 堺市消防局大卒程度 

日常生活における様々な分野で、AI を含めた最新のデジタル技術が活用されて

いるが、消防の仕事でこれらの利活用が実現可能と考えられる内容を 1 つ挙げ、

得られる効果と留意すべき点について、あなたの考えを 800 字以内で具体的に述

べなさい。

 

の解答例と解説記事になります。

まずはヒント編を読み論文を書く練習をしてみましょう。

 

<ヒント編>

―論題分析―

今回の論題は一見シンプルですが、若干難しめであると思います。構成としては論題の通り「最新デジタル技術を活用して得られるメリット」と「留意すべき点」の二段階構成で決まりです。

しかし、難しい点はそもそも

「最新のデジタル技術」を知らなければ全く内容が書けないことと、

「消防の仕事で利活用が実現可能と考えられる」とかなり厳しい条件

が設定されている点です。


まず、この条件をクリアするために最新デジタル技術について調べる必要があります。しかし、「利活用が実現可能」という条件が今回の論題で一番厄介なので、堺市以外での災害で活用実績がある技術を探していく必要があります。

そこで、例えば

「大規模災害(台風、洪水、大規模火災など)_最新技術」

と検索し他都市での災害対応でどのような技術が使用されたか調べてみてください。

なぜ大規模災害に限定して調べるかというと普段の火災や事故と比較して民間企業、行政問わず対応状況が新聞やニュースで報じられやすいからです。

そして、その災害対応で使用された技術を発見できたら「他都市での活用実績があるため本市(堺市)でも活用可能と考える」という論法で論述するのが無難でしょう。

 

―練習―

ウォーミングアップが終わったところで実際に書く練習をしてみます。下記の事項についてそれぞれ150字程度で埋めてみてください・

「消防業務に活用できるデジタル技術(概要を説明)」

「その技術を使って得られる効果・本市への導入可能性を提示」

「留意すべき点」

 

<解答例>

私が消防の業務で活用が考えられる最新デジタル技術は合成開口レーダーの技術だ。これが搭載された衛星はSAR衛星と呼ばれている。その技術の詳細としては衛星に搭載されたレーダーからマイクロ波を照射してその跳ね返りで得られたデータをデジタル技術で解析し、地表の詳細な画像データを手に入れることである。特徴的なことはたとえ夜間であろうと天候が曇りであろうと関係なく詳細な地表データが入手できる点である。ただしこの技術を活用するにあたっては衛星を運用する民間企業への協力要請が必須となる。


この技術を消防業務に活用して得られる効果は大規模災害が発生した際に被害の詳細がすぐに把握できることだ。また、先述の通り天候や時間に関係なく広範囲に地表が観測できることから、いつ発生するか分からない災害に対してドローンやヘリコプターを用いて目視するよりも効率的かつ安全であることもメリットである。得られた画像データをもとに現場への最短ルートの選定、出場部隊の割り当ての際に大いに力になる技術であると私は考える。実際、202511月に発生した大分県佐賀関での大規模火災や同年8月に発生した熊本県豪雨に民間企業のSAR衛星による画像が焼損範囲や水没地点の確認に使用されている実績がある。これらの実績から堺市でもこの衛星画像の活用が実現可能と考える。


しかし、この技術を活用するにあたって留意すべき点は画像の撮影のされ方そのものにある。つまり、撮影する際は地表に対して斜め方向から電波を照射し撮影するため、レイオーバー現象により高層ビルが歪んで映ったり、レーダーシャドウ現象で山の裏側が撮影されないケースがあるのだ。このことからこの技術を活用するにあたって普段の堺市がどのように映るのか様々なアングルで撮影しておくべきだと考える。そして写真の写り方と実際の建物の様子の違いを普段から確実に把握しておく訓練を実施すべきである。そして万が一大規模な災害が発生した際にもSAR衛星の技術を活用して被災状況を効率的に把握できるようにしておくべきだと私は考えている。


 

<解説編>

構成

1段落:SAR衛星の技術の概要

2段落:SAR衛星の技術を使うことによるメリット

    他都市での活動実績から堺市への導入可能性を提示

3段落:留意すべき点

の構成となっています。

 

―株の値動きを参考に普段から最新技術を把握する―

※注意:これより株価を参考にした解説を行いますが、これはいかなる株の売買あるいは投資を推奨、奨励するものではありません。あくまで解答するにあたっての最新技術に関する知識を仕入れるための方法を解説するものとなります。実際に株の売買や投資を行う際は自己責任にてお願いいたします。


今回の論題のポイントである「最新技術」ですが、本文では衛星技術について論じました。

しかし

「毎日報じられている膨大なニュースの中でどうやって消防業務に関連する最新の技術を把握すればいいか分からない」

と考えている方も多いかと思われます。

そこでそのような方におすすめなのが

「株価をチェックすること」

です。

具体的に述べると手段は2つあります。

1つは当日に株価がストップ高※をつけた会社の銘柄があればそれを検索し、その株価上昇の理由を調べることです。

(※株価が当日の値動きの範囲内で上限に達した状態)


手っ取り早いのは「ヤフーファイナンス」という株情報サイトをチェックすることです。

そしてそのサイト内で「日本株ランキング」というトピックを開いてください。するとその中に当日の値上がり率が高い順に会社名が掲載されているので1位から10位ぐらいまでをチェックしてみましょう。


上昇した理由が単に大金を運用する者による意図的な上昇の場合もあります。

しかし逆に会社自身が新たな製品や技術の開発に成功した等の公式発表が投資家たちの目に留まり、株の買い注文が殺到している場合もあります。


後者の場合、まず該当の会社のホームページを開きIRあるいは「投資家情報」などと表記されている個所をクリックします。すると投資家向けの情報が掲載されているはずなのでここでどのような技術や製品情報が公開されたのかチェックすることで最新技術の把握に使うことができます。

ただし、チェックした最新技術が必ずしも消防に応用できるものとは限らないので長い目で見ていく必要があります。教養を深める感覚で見るといいでしょう。

あるいは民間企業も含めて就職活動している方は業界研究の一環にしてもいいかもしれませんね。

 

2つ目は「業界や自社の技術が期待されて近いうちに株価が上昇したことがある銘柄」を探すことです。

例えば「kabutan_2026年前半急騰材料株ベスト50」で検索してみてください。

kabutanとは簡単に言うと国内外の株価や関連ニュースを配信しているサイトです。20267月現在、あくまで情報配信のみに特化しているサイトです。そのため利用しているうちに株の売買をさせられることはないので安心して閲覧して大丈夫です。)


検索結果を押してページを閲覧すると世界情勢や国内の政治事情、日経平均の値動きなど長い前置きがあり一見難しく見えます。

しかし具体的な会社名や株価は置いておき、最新技術の言及を探してみると「光ファイバー」「光デバイス」「蓄電池」「ドローン」などを確認することができます。


それぞれの技術を調べてみると

「光ファイバー」「光デバイス」は電力消費を圧倒的に節約し、かつ発熱を抑える技術

「蓄電池」は天候や時間帯に左右されやすい風力や太陽光発電による発電量を一定に調整する技術

「ドローン」はインフラ点検や警備、物資搬送など皆さんも比較的イメージしやすい技術分野ですね。

ここで大事なことは最新技術の把握が上記のものだけで止まってしまってはいけないということです。つまりこれらの技術が既存の他の技術にどのように応用されていくのかということまで把握する必要があります。

 

例えば「光ファイバー」「光デバイス」は人工衛星に組み込まれることで低電力消費、低発熱で大容量かつ高速のデータ送受信が可能となります。

そしてここからイメージを膨らませ、人工衛星業界ではどのような先端技術があるのか調べてみると本文でも述べた「SAR衛星」にたどり着くことができます。

 

20267月現在で取りざたされている最新技術はAIや半導体ですが、今後の動向として個人的には上記のような「宇宙・衛星」「光技術」が最新技術として認知されていくのではないかと思っています。

特に光技術は「光電融合技術」として、例えば携帯電話に組み込まれれば充電が月に1回で済むぐらいに電力消費が効率化されるようです。

そのため、最新技術の動向を把握するには、週1回程度でいいので「宇宙」「光電融合」関連で株価や関連ニュースをチェックしてみるといいかもしれません。また、その際は上記のようにイメージを膨らませ、応用できそうな技術や分野についても調べることを忘れずに。

 

 

―今回の論題に対して思うこと―

最後に、今回の論題について思うことを少し述べたいと思います。

ヒント編でも述べた通り私は「知っていなければ解けない論題」には反対の立場です。

一番良い例が2021年度東京消防庁一類で出題された

「デジタルトランスフォーメーションが人間社会に与える影響について」

です。

これを回答するためにはまず「デジタルトランスフォーメーション」について知っていなければなりません。受験生全員をこの時点でふるいにかけていること自体が自由な発想と論理的な意見の構築を評価する小論文の主旨を外れていることが分かると思います。


今回の堺市消防の論題も同様です。


解答するにあたっては最新技術について知っていなければならないことはもちろん、「消防業務での利活用が実現可能」と厳しい条件を付けていることが小論文試験の趣旨を外れていると言わざるを得ません。


「実現可能」という条件をクリアするためにはやはり他都市での活用実績がある技術に限定しなければ合格点には近づけないでしょう。当時の受験生たちが解答に苦しんだ様子が容易に想像できます。

 

そこで私が論題を作るのであれば以下のように出題します。

AIを含め、数ある最新技術の中からあなたが消防業務に応用できそうだと考えるものを一つあげ、それを活用したと仮定したときに得られる効果と留意すべき点を述べよ。」

 

どうでしょうか。このような論題こそが自由な発想とそれを裏付ける論理的な主張を展開できる、より小論文試験らしい論題であると思います。

 

そしてもしこの論題に私が解答するとすれば、最新技術としては上述した「光電融合技術」をあげます。

そしてこの技術を応用し

照明電源車※に搭載し、夜間帯において長時間にわたる消火、救助活動のサポートとして活用

することや、

消防庁舎の電源に組み込み、大規模災害時に市中が停電しても効率のいい電力消費で消防署が機能し続けられる仕組みづくり

を論じます。

そしてデメリットとしては光電融合の装置の製造コストが高く、導入するにあたっても費用が掛かることが予測できるため事前の予算確保が課題となることです。

※照明電源車:夜間帯の救助や消火活動の際に照明を灯して現場活動する隊員のサポートを行う車両のこと。

参考画像↓(照明電源車 柚木SS 八王子消防署 柚木分署)



コメント

0 件のコメント :

コメントを投稿