近年、自治体の広報活動では、ホームページや広報紙だけでなく、LINE、Instagram、YouTube、TikTokなどのインターネットを活用した情報発信が重要になっています。

特にスマートフォンやSNSの普及によって、自治体から住民へ情報を届ける方法は大きく変化しました。

 

しかし、単にSNSのアカウントを開設して行政情報を投稿するだけでは、十分な成果を上げることはできません。

そこで本記事では、2020年以降に自治体が実施したインターネット広報の中から、具体的な成果が確認できる事例を7つ紹介していきます。



1.自治体のインターネット広報が重要になっている理由


従来、自治体の広報では、広報紙や自治体ホームページが中心的な役割を担ってきました。

しかし、現在は住民がスマートフォンから情報を得る機会が増えています。

 

そのため自治体にとっては、

若い世代にも情報を届ける

災害などの緊急情報を迅速に伝える

地域の魅力を全国に発信する

住民から意見や情報を受け取る

行政サービスをより便利にする

といった目的で、インターネットを活用することが重要になっています。

 

特にSNSには、従来の広報紙にはない「拡散される」という特徴があります。

自治体が発信した情報を住民がシェアすれば、その情報をフォローしていない人にも届く可能性があります。

 

一方で、SNSごとに利用者の特徴が異なるため、目的に応じて媒体を使い分けることも重要です。

例えば、

LINE:住民への情報提供・行政サービス

Instagram:写真や動画による地域の魅力発信

TikTok:若年層への動画による情報発信

YouTube:詳しい説明や長めの動画

 

といった使い分けが考えられます。

ここからは、実際に成果を上げた自治体の事例を紹介します。



2.京都市|TikTok・ショート動画で約333万回視聴

京都市では、若い世代などに京都の魅力を伝えるため、TikTokなどを活用した情報発信を行っています。

2022年度には、人気クリエイター「ごっこ倶楽部」とタイアップし、京都市を「住むまち」としてPRするショートドラマを制作しました。

TikTokだけでなく、YouTubeやInstagramにも動画を展開しています。

 

また、京都の伝統産業品の魅力を伝えるため、人気クリエイターと連携したTikTok LIVEも実施しました。

過去の取り組みでは、京都の伝統産業品を紹介するTikTok LIVEに約1万5,000人のユーザーが視聴した事例もあります。

 

成功したポイント

京都市の取り組みで重要なのは、単純に「京都市からのお知らせ」を投稿するのではなく、SNS利用者が興味を持ちやすい動画コンテンツにしていることです。

 

行政が伝えたい情報を、そのまま発信するのではなく、「見てみたい」と思ってもらえるコンテンツに変換している点が参考になります。


3.袖ケ浦市|消防士の動画が200万回以上再生

千葉県袖ケ浦市では、TikTokを利用して市の魅力や行政に関する情報を発信しています。

 

市はTikTokについて、「行政」や「地域」に興味を持ってもらい、行政を身近に感じてもらうことを目的として運用しています。

 

特に注目されたのが、消防職員の訓練を撮影した動画です。

消防士が行う「ロープブリッジ救出」の訓練動画は、200万回以上再生されました。

 

さらに、TikTokを活用した自治体広報の取り組みが評価され、2023年にはTikTok Japanの公的セクター向けアワードで審査員特別賞を受賞しました。

 

成功したポイント

この事例の特徴は、「自治体だからこそ撮影できる映像」をコンテンツにしたことです。消防士の訓練は、一般企業では簡単に制作できません。

 

つまり、

「行政が伝えたい情報」

だけではなく、

「行政だからこそ提供できる、他では見られない情報」

を発信したことが大きな特徴です。

自治体のSNS広報では、このような「自治体ならではのコンテンツ」を探すことが重要だといえます。



4.横浜市|Instagramで地域の魅力を発信

横浜は港、夜景、歴史的建造物など写真との相性が良い観光資源を数多く持っています。そのため、市としてもInstagramを活用して横浜の風景や街の魅力を発信しています。

 

文章中心の行政広報とは異なり、写真や動画を中心としたInstagramとの相性が良いと考えられます。2022年には公式Instagramのフォロワーが10万人を突破するなど、大きな規模に成長しました。

 

成功したポイント

横浜市の事例で参考になるのは、「行政情報を発信するSNS」ではなく、「横浜のファンを増やすSNS」として活用している点です。

例えば、

「○月○日に○○のお知らせがあります」

という行政情報だけでは、SNSをフォローする動機が弱くなります。

 

一方、

「横浜の美しい風景を見たい」

「横浜の最新情報を知りたい」

という目的があれば、自治体のSNSそのものに価値が生まれます。

 

5.横浜市|LINEを行政サービスの入口として活用

横浜市はLINEも積極的に活用しています。

現在の横浜市LINE公式アカウントでは、行政からのお知らせやイベント情報だけでなく、

 

防災情報

生活情報

ごみの分別案内

粗大ごみの申込み

道路の損傷通報

図書館の蔵書検索

 

など、さまざまなサービスを利用できます。

つまり、LINEを単なる「広報媒体」としてではなく、「行政サービスを利用する入口」として活用しているのです。

 

成功したポイント

「自治体からのお知らせを読むために登録してください」

だけでは、登録するメリットを感じてもらいにくい場合があります。

 

そこで、

「ごみの分別を調べられる」

「粗大ごみを申し込める」

「道路の損傷を通報できる」

といった日常生活に役立つ機能を提供することで、LINEそのものの利用価値を高めています。

6.熊本市|LINEを便利な行政サービスに

熊本市もLINEを行政サービスに活用した自治体の事例です。

 

市ではLINEを利用して、

新型コロナウイルス関連情報

ごみ分別検索

市民からの情報提供

必要な情報だけを受け取るための情報配信

などを行いました。

 

過去の事例では、LINEの友だち登録者が約8万人に達したほか、新型コロナウイルス関連情報の検索が約18万回、ごみ分別検索が約6万回利用されるなど、具体的な利用実績が確認されています。

 

成功したポイント

熊本市の事例から分かるのは、

「情報を届ける」

だけではなく、

「住民が情報を探す仕組みを作る」

ことの重要性です。

 

自治体が一方的に情報を送るだけではなく、住民が必要なときに必要な情報を検索できるようにすることで、LINEが日常的に役立つサービスになります。



7.焼津市|LINEクーポンで人口を超える登録者

静岡県焼津市では、LINEを活用した情報発信に加えて、クーポンなどの施策を行いました。

特徴的なのは、LINEの友だち登録者数が市の人口を上回ったことです。

 

具体的には、飲食店や小売店などを支援する目的でLINEクーポンを配布したことで市民だけでなく、市外から訪れる人にもLINEを登録してもらうきっかけが生まれました。

 

成功したポイント

この事例では、

「自治体から情報を受け取るために登録する」

という従来型の広報だけではなく、

「登録すると得をする」

という仕組みを作ったことがポイントです。

また、LINEを市民だけでなく観光客にも利用してもらうことで、自治体の情報発信対象を市外へ広げています。


8.鹿児島市|LINEスタンプを登録のきっかけに

鹿児島市では、LINE公式アカウントの友だち登録を促すため、オリジナルLINEスタンプを活用しました。

 

鹿児島らしさを取り入れたキャラクターなどを使ったスタンプを無料で配布することで、LINE登録のきっかけを作りました。

その結果、開始からわずか4日間で5万人が登録しました。

 

成功したポイント

この事例のポイントは、

「鹿児島市の情報を受け取りませんか?」

と宣伝するだけではなく、

「無料スタンプがもらえる」

という分かりやすいメリットを提示したことです。

 

自治体の広報では、「情報を発信すること」だけでなく、「最初にどうやって住民に接点を持ってもらうか」も重要になります。


9.成功した自治体に共通する4つのポイント

ここまで紹介した事例を見ると、自治体のインターネット広報を成功させるための共通点が見えてきます。

 

ポイント1.「行政が伝えたいこと」だけを発信しない

SNSでは、行政が伝えたい情報と、利用者が見たい情報が一致するとは限りません。

 

袖ケ浦市の消防士の訓練動画のように、

「自治体だからこそ発信できる面白い情報」

を見つけることが重要です。

 

ポイント2.利用者に「フォローする理由」を与える

「SNSをフォローしてください」と呼びかけるだけでは、登録者を増やすことは難しくなります。

そこで、

・クーポン

・無料スタンプ

・防災情報

・ごみ分別検索

・行政手続き

・イベント情報

など、登録する具体的なメリットを作ることが重要です。

 

ポイント3.SNSを行政サービスと組み合わせる

自治体のインターネット活用は、単なる情報発信から行政サービスへと広がっています。

 

例えば、

「LINEで市のお知らせを読む」

だけではなく、

 「LINEでごみの分別を調べる」

「LINEから行政手続きを行う」

「LINEから道路の損傷を通報する」

 

といった使い方です。

このようにすることで、SNSを日常的に利用してもらいやすくなります。

 

ポイント4.媒体ごとに役割を変える

すべての情報を同じSNSに投稿するのではなく、媒体の特徴を考えて使い分けることも重要です。

 

例えば、

LINEで防災、行政サービス、生活情報を配信

Instagramで観光、風景、地域の魅力

TikTokで若者向け動画、職員・地域の魅力

YouTubeで詳しい説明、イベント動画

ホームページで正式な行政情報、詳細情報

というように、それぞれの特徴を生かすことができます。



10.自治体がインターネット広報を行うメリット

これらの事例から、自治体がインターネットを広報に活用するメリットとして、次のような点が挙げられます。

 

① 若い世代にも情報を届けられる

TikTokやInstagramなどを利用することで、従来の広報紙だけでは情報が届きにくかった若年層にもアプローチできます。

 

② 情報を迅速に発信できる

ホームページや広報紙と比較して、SNSでは情報をすぐに発信できます。

特に災害や感染症など、緊急性の高い情報との相性が良い方法です。

 

③ 情報が拡散される可能性がある

SNSでは、住民が情報をシェアすることで、自治体のフォロワー以外にも情報が届く可能性があります。

 

④ 地域の魅力を全国に発信できる

InstagramやYouTube、TikTokなどを利用すれば、自治体の魅力を市外・県外の人にも伝えることができます。

観光客の誘致や移住促進などにも活用できます。

 

⑤ 住民との双方向のコミュニケーションができる

従来の広報紙は、基本的に自治体から住民への一方向の情報発信でした。

 

一方、SNSではコメント、アンケート、通報などを通じて、住民から自治体へ情報を届けることもできます。

 

11.まとめ

2020年以降、自治体のインターネット広報は大きく変化しています。

成功している自治体の事例を見ると、単にホームページの情報をSNSに転載するだけではなく、

「その媒体を利用する人が何を求めているのか」

を考えて情報を発信していることが分かります。

 

京都市や袖ケ浦市のTikTokでは、動画を活用して若い世代にも興味を持ってもらえるコンテンツを制作しています。

 

横浜市では、Instagramで地域の魅力を発信する一方、LINEではごみ分別や粗大ごみ申込みなど、住民生活に役立つサービスを提供しています。

 

また、焼津市や鹿児島市では、クーポンやLINEスタンプなどを登録のきっかけとして活用しました。

 

このような事例から、自治体のインターネット広報を成功させるためには、

①利用者が見たい情報を発信する

②登録するメリットを作る

③行政サービスと組み合わせる

④媒体ごとの特徴を生かす

ことが重要だと考えられます。

 

今後もスマートフォンやSNSの利用が続く中で、自治体にとってインターネットを活用した広報は、住民に情報を届けるための重要な手段になっていくでしょう。