【解答例】令和7年度仙台市消防 小論文「大規模化する災害に対する消防の役割」
化学車 三宿CP(東京消防庁 世田谷消防署 三宿出張所)
令和7年度仙台市消防小論文
「地域社会と連携しながら大規模化・激甚化する自然災害に対応するために、消防が果たすべき役割について、あなたの考えを論じなさい。」
の解答例と解説記事になります。
まずはヒント編を読んで論文を書く練習をしてみましょう。
<ヒント編>
ー論題分析ー
今回の論題はシンプルで論題の通りに論述すれば問題ありませんが、少し考えなければならないことがあります。
それは普段から火災や救助などで人々の命を救っている消防が大規模災害時になぜ地域社会と連携しなければならないのかということです。
その時にキーワードとなるのが「自助」「共助」「公助」の3つです。
・「公助」はすなわち消防や警察、自衛隊など行政機関による救助
・「共助」は市民が互いに助け合うこと
・「自助」は自分で自分を守る力のこと
すでにご存じの方もおられるかと思われますが、大規模災害の際は共助が大変重要な要素になってきます。
そこで今回の論文で盛り込まなければならないことは
「なぜ消防が大規模災害の際に地域社会と連携しなければならないのか」
「なぜ共助が重要な要素になるのか」
「共助体制を育成していくために消防はどうしなければならないのか」
の3つの要素です。
もちろん公助としての消防自身も大規模災害に対応するためにどうしていかなければならないか述べることも解答にあたって重要です。
特に「共助体制の育成」について述べることは論題にある「消防が果たすべき役割」に答えることにもつながってきます。
ウォーミングアップが終わったところで実際に論文を書く練習をしてみます。下記の項目について150字程度で書いてみてください。
「大規模災害に対応するために消防自身はどうしていかなければならないか(公助の強化)」
「大規模災害の際なぜ共助が必要になるのか」
「共助体制を育成するために消防がどういう役割を果たすべきか(共助の強化)」
<解答例>
大規模化・激甚化する自然災害に対応するため、消防は公助の中核としての専門的対応力を高めると同時に、共助を育てる機関として地域社会との連携を主導する役割を果たすべきである。その理由は二つある。
第一に、公助の中核を担う組織として、災害の激甚化に見合う専門的対応力を不断に高める必要があるためである。近年の豪雨災害や大規模地震は、複合災害化・広域化が進み、従来の想定を超える救助・救急需要を生んでいる。消防はドローンや情報通信技術を活用した被害状況の早期把握、特殊な資機材を用いた高度救助技術の習得、他機関、他地域からの応援を迅速に受け入れる体制整備など、専門性そのものを不断に更新していく必要がある。この専門的対応力の高さこそが、地域社会が最終的に頼りうる最後の砦としての消防の果たすべき役割である。
第二に、消防の専門性だけでは対応しきれない初動の空白を埋めるためには、共助の担い手を地域に育てることが不可欠だからである。災害規模が大きくなるほど同時多発的に事案が発生し、消防が現場に到着するまでに時間を要する。この間の被害拡大を抑えられるのは、現場に居合わせる住民や自主防災組織にほかならない。消防は平時から訓練指導や資機材の使い方の周知を行い、初期消火や避難誘導、軽度の救助を担える人材を地域に育成することで、公助が到着するまでの空白を実質的に埋める役割を果たせる。
以上のことから、消防は専門的対応力という公助の質を高めると同時に、共助の担い手を育成・支援する役割を担うべきである。大規模災害への対応力は、公助と共助が有機的に結びついて初めて発揮されるものであり、その両輪を自ら体現することこそ、これからの消防に求められる姿だと考える。
<解説編>
段落構成
1段落:結論
(大規模化する災害に対して消防が果たすべき役割)
2段落:理由①
(災害の激甚化に対して専門性を高めて地域の最後の砦になる必要)
3段落:理由②
(消防が到着するまでの空白を埋められるのは市民や防災組織なので、普段から彼らを指導、育成して備えなければならない)
4段落:まとめ
の構成となっています。
―なぜ共助が必要なのか―
なぜ大規模災害の際は共助が重要になってくるのかというと、一言で言えば公助が追いつかないからです。
大規模災害によって市民が多数被災すると消防や警察に通報が殺到します。当然警察や消防にも人員に限りがあり、通報を受けてもすぐに駆け付けられるとは限らないのです。
しかも仮に道路に電柱が倒れていたり、冠水していれば消防車が現場に着くことさえ困難になります。そこで公助が来るまでの空白を埋められるのが市民たちによる共助であるということです。
しかし誰かを助けるにあたって一人で何とかしようとしても困難が伴います。
例えばスタンドパイプと言われる地域に備え付けられている簡易的な放水設備の使用についても同様です。スタンドパイプ使用時には元栓を開いて送水する者、ホースの先端を持って火点に放水する者の最低でも2人で扱うことができなければ意味がありません。
しかもホースの先端を持つものは放水時の反動を考えて若干体重を前に掛けながら構える必要があるため反復して訓練や練習を行って慣れなければなりません。
このような複数名の力が必要な訓練を主導して実施していかなければならないのが公助の中核としての消防の役割だと思っています。
―消防組織だけが大規模災害に備えているわけではない―
今回は地方自治体消防の論題ということで、消防が果たすべき役割についての解答でした。しかし、大規模災害に備えているのは地方だけではありません。
実は国の機関である総務省消防庁もまた大規模災害に備えて国に予算を求めている動きもしています。
余裕があれば
「令和8年度消防庁予算 概算要求について」
と検索して資料を確認してみてください。
その資料によると「緊急消防援助隊の充実強化」項目内にある「緊急消防援助隊設備整備費補助金」については61.6億円が計上されています。
その61.6億円で何をするかというと、
南海トラフ地震など広域災害に備えた消防庁ヘリコプターの増機
夜間監視・熱源探査用ドローン
急傾斜の林道にも進入できる林野火災対応ユニット車
海や河川の水を約2km先まで送水できる「スーパーポンパー」や大型水槽付き放水車などの特殊車両の配備
がリストアップされています。
しかし実際は財務省の査定により54.9億円へと減額されましたが、これは単なる減額ではなく特殊車両や資機材配備が補正予算を使用して前倒しで実行されたことによる減額です。
また、昨年の緊急消防援助隊設備整備費補助金が49.9億円だったので、実質+5億円の増額ということになります。
そして来年度(2027年)分の予算を要求する「令和9年度総務省消防庁概算要求」では緊急消防援助隊設備整備費補助金としてなんと今年度+約14億円の68.9億円が計上されています。
しかし今回の68.9億円の要求はまだ予算として確定したわけではありません。
この後12月末ごろに財務省による審査や査定を経た上で内閣が国の予算案として閣議決定します。
そして最終的に2027年3月末までに国会での審議を経て最終的な予算が決定します。
果たして「緊急消防援助隊設備整備費補助金」は今年度予算からどれぐらい増額できるのか楽しみですね。
―豆知識―
激甚化(読み方:げきじんか)
激甚(げきじん)は「非常に強い」といったニュアンスの単語です。それが「化」と組み合わさることで「物事の規模が強くなる・大きくなる」といった言葉として使われます。
最近では論題にもあるように「災害の激甚化」という言葉がニュースでもよく聞かれるようになりましたが、災害限定の用語ではないことに注意です。
例えば、
「他社製品との競合が激甚化する」
「国同士の対立が激甚化する」
といったように使われることもあります。

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